俺と妻は、恋愛して一緒になったのか?
答えはNOだ。
お互い寂しい者同士くっついた、そう言った方が正解だと思う。
ではただそれだけなのか、それも少し違う。
「信頼」
それは間違いなくあると思う。
妻は元スナック経営、一見華やかに見えていたが、妻の交友関係は、意外にも狭かった。
友達と呼べる人がほとんどいなかった。
お客さん、業者さん、同業の仲間。
同業の仲間、友達とは言え、ライバルでもある。
本当の友達と呼べる人がほとんどいなかった妻。
実は俺も。
仕事の仲間、付き合い。
かろうじて学生時代の友達、数人が本当の友達と言えた。
似た者同士と言えた。
その似た者同士による信頼が、俺達を結んだと思えた。
店を閉めたいの話しから始まり、妻の通い婚状態になるまで、三ヶ月少ししか要しなかったのはその辺だと思う。
籍を入れる決心をしたのは、妻が水商売に入るきっかけを作った、独立前に勤めていた、妻の憧れたスナックのママさんに会わされたことだった。
すでに店は他人に譲り、70を過ぎ、悠々自適の生活をしていた。
三人で色んな話しをした中で、その元ママさんは言った。
「あなた方は本当に信頼しあってるのがわかる。一緒になってもやっていける」
「愛情?そんな子供みたいな。20や30の小娘じゃあるまいし(その人にとって、30は小娘)」
そう笑った。
70過ぎにしては、背筋も足取りも若々しくて、着ている物も派手ではないが、お洒落さを感じた元ママさん。
「彼氏に負けたくないからね」
なんとその元ママさん、現在30も若い男性と同棲、俺よりも若い男性。
妻を見て、その元ママさんは語った。
「70過ぎた婆さんがそんな生活してるんだから、20近く若いあんたなら、そんなの楽勝でしょう?私がその彼氏の相手を週二で勤めてるんだもの、あんたならまだ毎日だって大丈夫でしょう」
そう言って、高らかに笑った。
「毎日はちょっと~」
「私も50に手が届く年齢ですし」
と二人で少し引いたような発言をした。
「そうゆうとこの、二人の言葉と呼吸が合う、それが大事なのよ。大丈夫」
そう言って優しく笑った元ママさん。
俺の腹が決まった瞬間だった。
そして最後に。
「この子をよろしくね」
昨年の一月の事だった。
通い婚状態だったのを、俺は妻にきちんとしようと提案し、妻は了承してくれて、荷物を少しずつ、俺の家に運ぶ作業に着手した。