嫁と俺は職場にて知り合いました。
俺より二つ年下で、建材会社から転職してきた嫁が入ってきたとき、ぺーぺーだった俺に、やっと後輩が出来た、しかも可愛いときていて喜びました。
嫁は毎日、お手製弁当を持参してきてました。
それがある日、いつもの弁当袋を持たずに出勤してきました。
『朝、ちょっと寝坊しました』
俺はいつも、近所の惣菜屋やスーパーの弁当を買うか、定食屋で昼をすませていました。
『じゃあ、〇(定食屋)に昼、行かないか?』
嫁はにっこり笑ってこう言いました。
『はい。いつか行ってみたいなって思ってました』
それから一緒に昼休みを過ごすようになり、俺は頃合見計らって、映画に誘ってみたのです。
断られる、半分そう覚悟してました。
そしたら嫁はこう言いました。
『お母さんに言われるんです。休みにただゴロゴロしてるなって。出不精なんです。たまに友達から誘われても、面倒くさくなって、断ることが多いです』
あぁ、やっぱりお断りか、そう思ったんですが、続いた言葉は意外なものでした。
『行きます。何時ですか?』
これが記念すべき嫁との初デートでした。
そのとき、彼氏は現在いないことを確認でき、また誘ってよいかの質問に、笑顔で是非と言われました。
そしてついに初ベットインとなるのですが、童貞ではなかったものの、彼女いない期間が長かった俺、物凄く緊張していました。
柔らかくて温かくて、こいつを手放したくない、そう思いました。
そしてプロポーズ、なんの飾りもない言葉しか思い浮かばずでした。
『お願いします。結婚してください』
深々と頭を下げました。
『頭上げて下さい』
嫁を見たらにっこり笑っていました。
『なんの取り得もない私ですが』
そして嫁が深々と頭を下げてくれました。
嫁の両親への挨拶のとき、嫁からは優しい父だからと言われていましたが、心臓が口から出そうなくらい緊張しました。
優しいと聞いていたお義父さん、結婚の許しを請うと、俺の奥襟をがっちり掴まれ、畳に額をこすりつけられました。
『俺んときは、このくらい頭を下げたものだ』
怒ってる、絶対怒ってる、そう思いましたが、見上げるとお義父さんの目は笑ってました、が、腕の力には怒りが籠もっていました、絶対。
式が終わり、友人とかの二次会に顔を出し、ホテルに帰ったとき俺はもうグデグデ、嫁と初夫婦喧嘩でした。
懐かしい思い出です。