そして、彼の男根が入ってきたときにはもう、すでに、夫と子供の
ことは頭から消えていました。最後に生まれたままの姿の二人は
汗だくで、獣の雄と雌に変わっていた気がします。雄ライオンが
子孫を残す本能のために雌ライオンに襲い掛かるシーンをテレビで見た
光景がぴったりだったかもしれません。私は人間にも動物の本能が
残っていると思います。絶頂を迎えたときには理性は消えるのです。
その瞬間は雄も雌も子孫を残す、その本能しか頭に無いのです。
激しく律動する彼の腰の動きに、気は遠くなり、現実は遠くなり
かすかに聞こえて着た彼の言葉「出してもいい?」に、「うん」と首を
縦に振っている自分が居たのです。そして膣の中に白い液体が脈打ち
ながらほとばしるのを感じました。彼は体力を使い果たして、私の
横に並んで横たわっていました。数分たってはじめて、膣口から流れ
出る液体に、我に返ったのです。「いけない!」言葉には出しませんで
したが、起き上がった私は浴室に駆け込みました。膣の中を洗い流す
ためにです。どれだけの効果があるのかわかりませんが、その時は
理性が戻っていたのです。実を言うと、その日は、箪笥の奥にしまって
いるコンドームを2個バッグに持って来ていました。でも無駄でした。
時計も5時前になっていたので、お互いに余韻に浸ることもなく、
彼のうちを出たのです。私は車で通っていました。帰る車の中で
彼との営みが走馬灯のように頭をよぎり、そして、自宅に近づくに
つれて、夫と子供の顔が浮かんできました。現実に戻ったのです。
自宅に戻ると子供が帰ってきて、また、普段の生活にもそりました。
子供を寝かせて、夫が帰ってきたのは9時過ぎでした。夫の顔を
直視できませんでした。なるべくそばに居ないように、忙しくして
避けていました。その夜は夫を先に寝かせて、家事をしていました。
寝付けませんでした。今日一日の行動が今までの結婚生活を断ち切った
気がしました。もう、いまさらどうしようもないことなのに・・・。
一番気がかりなのは妊娠するかもということでした。生理日から
計算すると、かろうじて安全日には入っていましたが、そんなことは
気休めになりませんでした。でも、大丈夫だと言い聞かせることしか
できなかったのです。翌日朝早くに産婦人科に行きました。避妊薬
をもらうためです。性行為後に服用するものです。自宅に戻ったのは
お昼前でした。彼との連絡は私からの一方的な電話だけと決めていました。
帰りしなに買ったお弁当がのどに通りませんでした。彼と会えるのは
今日が最後だと頭をめぐりました。1時間ほど葛藤しました。行くか
いかないか。気がついたときには車のキーを握って玄関を飛び出して
いました。30分もかからず彼のうちにつきました。玄関を開けると
彼の姿が見えませんでした。奥の部屋に行くとベランダでゴミを
片付けていました。ベランダで手を洗って部屋にはいると、もう
こないかと思ったと言いました。そして、私の手をつかむと和室に
連れて行きました。「今日が最後だよ」とすぐに求めてきました。
私はなんて女なんだろう。さっきまでの葛藤はどこへ消えたて
しまったのか。彼の求めに応じて、裸体をさらし、彼に服従
したのです。そして、なんとまたも中に受け入れてしまいました。
避妊薬が残っていたからです。何度も果ててしまいました。
そして、また遅くに自宅に戻ったのです。それからしばらくして
夫の転勤が決まりました。新任地に出向くときに携帯を変えました。
もう、これ以上夫と子供たちを裏切るまいと誓ったからです。
あれから2年余りたちます。恥を忍んで正直に言いますと、
時々彼のことを思い出します。そして、自慰にふけります。
夢の中なら、夫も子供も許してくれるのではと自分に都合よく
考えています。いまだに、成熟できない主婦をしています。