受験生がいるからと、俺が単身赴任をしていた時のことだ。
月に2階しか帰れなくて悶々としていたが、愛する妻を裏切ることはできないので、自分で処理をしていた。
しかし、最初に妻に不審を抱いたのは、中2の一人娘だった。
それは、妻の両手首にあった痣だった。
それが何だかわからなかったが、首筋にも痣があったそうだ。
その痣は、俺が帰ってくる頃には無かったから、一過性のものなのだ。
その話を何気に聞いたのは、娘が中2が終わった春休みだった。
色々考えていたが、首筋の痣ってキスマークではないかとか、両手首の痣は緊縛痕ではないかとか、疑い出した。
俺は、妻の潔白を証明するために興信所を訪ねた。
興信所からは、またとない家庭内不倫を誘導してみてはどうかと提案された。
それは、中3になってすぐにある娘の修学旅行で、俺も帰れず妻が一人きりになる状況を作れと言うのだ。
俺は、娘が修学旅行に行く前、休暇を取って家に戻り、ホテルを取って、娘が学校へ、妻が買い物へ出かけたすきを狙って、興信所から渡された小型カメラをリビングと寝室に仕掛けた。
結果、真っ黒だった・・・
3歳年下の40歳の妻は、55歳の昔の上司と不倫していた。
娘が中学に入った時、妻がパートタイムで昔の職場に戻って、今は他の部署に移って出世した元上司と再会し、不倫が始まったらしい。
画面には、夫婦の寝室で妻がかつての上司とセックスする痴態が映っていた。
不倫のセックスは、夫婦のセックスよりとてつもなく卑猥なセックスだった。
しかも50代のエロオヤジのドスケベなセックスは、変態的だった。
案の定、妻は手足を縛られて、屈辱のM字開脚で陰部露出を強いられていた。
陰部を猥褻な玩具で嬲られて、恥じらいに顔を赤らめていた。
そして、元上司の生の陰茎で膣奥深くまで汚辱され、本気で感じて喘いでいた。
妻の身体は淫虐に染め上げられ、
「今日は大丈夫な日だから・・・中に・・・」
「そうか、中に欲しいのか、そうか、そうか・・・」
何と元上司は妻の膣内に射精した。
妻は、不貞の禁忌精液の熱い快感に潮噴きで応え、ヨガり乱れた。
俺だけのものだと思っていた妻の乳房、太股、お尻、子宮・・・それが、他の男によって穢されていた。
敗北感・・・愛しさの分激しい怒りと嫉妬に見舞われた。
「この大バカ者!」
義父が妻にけりを一発、吹き飛んだ妻・・・
その後、俺に土下座した義父、震えて泣く義母・・・
その様子を見て、固まった娘。
裏切られた俺と同姓の義母の怒り、裏切った妻と同棲の母の悲しみ、娘の母親を見た蔑みの目は、おぞましかった。
このままでは母子関係は維持できず、暫く、妻は実家へ戻り、義母が娘と暮らした。
俺は、間男の妻の元上司の奥様に例の動画を見せた。
その時知ったが、元上司の長女は縁談が進行中で、元上司の家庭に激震が走った。
帰宅して、俺がいたから狼狽えた元上司は、テーブルの上のモバイルPCを見て全てを悟った。
妻のパート先にも報告、元上司は昔の部下に手を出したことで、懲戒会議で事情聴取された。
元上司は離婚、娘さんの縁談は破談にはならなかったが、元上司はかなり遠方の田舎に飛ばされて街から消えた。
退職金の前借で俺と奥さんに500万円ずつの慰謝料を支払った上、夫婦の財産は放棄させられた。
その後俺の娘は、俺が赴任先でプロジェクトチームを組んだので、数年は転勤しないことが分かったから、俺が暮らす街の高校を受験した。
それは、娘が母親との決別する意思表示を意味した。
俺も、まだ妻を愛していたが、あの映像を見てはとてもじゃないが再構築は不可能だった。
義父母も俺の両親も、離婚を受け入れた。
俺は、娘と俺の部屋が確保できるマンションに移り、娘の荷物の運搬と、離婚のために戻った。
娘は一緒に来なかった。
「あなた、ごめんなさい。言い訳はしません。あの子にも、ごめんなさいと伝えてください。母親失格・・・娘に合わせてとは、言わない・・・」
「俺とは他人だが、娘とは母子、娘次第だな・・・それから、お義父さんとお義母さんは、娘は孫ですから、会いたい時には連絡ください。」
「今回は、済まなかった・・・無念だ・・・」
「では、慰謝料も養育費も求めない代わりに、夫婦の財産放棄でいいな。離婚届は、俺が出しておく。じゃあな。お別れだ。」
「あなた・・・今までありがとう。さようなら・・・」
4年前、こうして妻が、元妻になった。
俺は、娘の高校卒業と同時に赴任先から元の家に戻っている。
娘は、元の家がある短大に通っている。
長年暮らしたこの家に、元妻がいない事が不思議な風景に映った。
俺が戻ったことを知ったとき、元義父母が訪ねてきた。
短大生になった孫を見て、目を細めていた。
そして、元妻はこの街を離れ、東京で暮らしていることを聞いた。
その話を聞いて、少し、元妻に残る愛情と未練が軽くなった。
今、戻った勤務先で知り合った女性と交際している。
年齢は5歳年下の42歳、整った顔立ちなのだが、仕事に熱中するあまり婚期を逃したそうだ。
「35歳くらいから、結婚は諦めたんです。」
と言う彼女は、半年前、初めて男女の関係になった時、恥かしそうに、
「私、大学時代の彼氏以来、20年ぶりなんです・・・」
と言うウブな42歳だった。
再婚するかどうかは今は分からない。
ただ、少なくても、彼女に対する愛情が、元妻へのそれを上回ってきたことは感じている。
それは、この家に残っている元妻の気配が薄れて来ている事だと気付いた。
「あなた・・・今までありがとう。さようなら・・・」
元妻の別れの言葉を思い出していた。
「戻ってきた時、お前の気配が残ってたな。もしかして、留守番してくれてたのかな。今までありがとう・・・」
そう言ったら、元妻の気配が消えて、元妻が過去の人になってゆく寂しさを感じた・・・