お祭り2日目、時刻は16時を過ぎた頃から男神輿と女神輿が始まった。娘は地元に住む私の妹夫婦に預け、私と妻のサツキはそれぞれ神輿に参加することになった。やはり半纏と股引を着た妻の姿は色っぽく、普段の私服とのギャップもあってドキドキしてしまう。白のサラシを身体に巻きつけているが胸の膨らみは確かにわかる。それぞれ決まったコースを神輿で回っていく。いくつかある休憩所の中で、終盤に差し掛かり最後の休憩所である商店街前には親父の姿もあった。Tシャツと短パンというラフな格好で、法被を羽織っていた。そして手には半纏を持っていた。60歳にしてはというと失礼だが175cm程身長があり、体型も趣味のジム通いということもあって親父は若々しく見える。「おう。女神輿の方はもう先に行ったで。」「そうか。女神輿の方は毎年の事だけどサツキ担いでるのわかったか?親父も力あるんだし神輿参加すればいいのに。」「俺はええんよ。男神輿は暑苦しいだけやろ?普段の主婦はお休みして、女の顔しながら汗流して必死に神輿担ぐ女神輿の方が見てて楽しいわ。サツキさん担いでるのは直ぐに分かったで。」「お。よくわかったじゃん。てっきり親父のことだから人数多くて分からんかったわとか言うと思ったが。」「前もって言われてたんや。あたしは前方で担ぐのでってな。それに髪型もポニーテールに結ってるので見つけやすいですよって。だから直ぐに分かったで。お前の嫁さん可愛いでやっぱり。誇っていい。ええ嫁さんや。」親父が腕を組みながら言う。「なあ親父。その持ってる半纏って誰の?」「おうこれか。サツキさんの半纏や。暑くて暑くて脱ぎたいんだと。だから俺が預かることにしたんよ。そうやお前これ神輿終わったら届けてやり。」俺は親父と別れ休憩所から神輿を担ぎながら去った。その後もお祭りは続き最終日ということもあり、かなり盛り上がった。しかし盛り上がるのはこれからで、2日間総括の打ち上げが行われる。お店を何軒か貸し切って打ち上げが行われた。勿論、私と妻のサツキも参加をする。娘は妹夫婦に預けたままだ。「サツキお疲れ。これ親父から半纏、預かってた。」「うん、ありがと。今年も盛り上がったね~。」妻と談笑してお互い地元の奴から聞いた世間話を話す。他愛もない話をしてた頃、妻から一度娘の所に顔を出してくると言われた。今日全然娘の顔も見てないし、話してもないから寂しい思いさせてると嫌だから顔出してくると言われ、私は引き留めることなく妹夫婦の自宅の元へと行かせた。昔私が幼い頃から、親父と付き合いがある商店街のおじさんの姿を打ち上げ会場で見つけ声をかけた。「お久しぶりです。村上さん(仮名)。あのウチの親父見ませんでした?」「おお。久しぶりやなぁ~。吾郎ちゃんならコレのとこじゃねえか?」ニヤつきながら小指を立てる。つまり女の所に行ってるということか。「そうですか。わかりました。ありがとうございます。」「多分、多分やで?吾郎ちゃんのことやから女神輿参加した子らに声かけてるか、京子ちゃんのとこやろな。」「京子ちゃん?誰ですかそれ。」「吾郎ちゃんの今の彼女みたいなもんかなぁ。あんまし息子のアンタには言っちゃあかんことやけど。頻繁に家に出入りしてるみたいやで?」俺は村上さんから話を聞いた。そして別にこの話を特に気にすることもなく、呑み始めた。何時間経ったかわからないが暫く時間は経っていたと思う。妻のサツキが打ち上げ会場に帰ってきて俺の元へ水を持ってきた。「ん?サツキ、お前家戻ったのか?」「あ、うん。ミサキの様子見に行ってからこのままの格好だと何かなぁと思って、家寄って着替えてきちゃった。」そういう妻は長い黒髪を下ろして、ノースリーブの服とジーンズを履いていた。「なあ実家寄った時、親父いた?」「え。吾郎さん?吾郎さん…いたけど。なんで?」「ああ。なんだ。家戻ってたのか。いやなんでもない。」「なんか酔いすぎて、頭痛いから寝るって言ってたわよ。」「そうなのか。もしかしてサツキ、少しだけ親父の様子見てきてくれたのか?ありがとうな。」「ううん。たいしたことしてないよ。ただ水持ってってあげたりしただけだし。でも今日は実家戻らないほうがいいんじゃない?ゆっくり寝かせてあげた方が。」私と妻は親父に気を遣って打ち上げ後は実家に帰らないようにした。そして私も久しぶりに会う旧友と昔話で盛り上がり、貸し切ったお店で雑魚寝をする羽目になった。まだ外は薄暗かったが、朝方目が覚めて周りを見渡すと、ちらほらと雑魚寝をしている者もいれば帰った者もいた。妻の姿は無かった。おそらく朝方帰ったのか。俺も実家へと酔い覚ましにコンビニで買った栄養ドリンクを飲みながら、歩いて帰っていった。静かに親父を起こさぬように玄関を開けて、和室へと向かった。和室へと向かう途中、台所に灯りがついていたのが見えた。俺も水を飲みたかったので台所に入ろうとした時だった。忘れもしない。親父と妻が抱き合いながら夢中になって口づけを交わしていたのだ。親父の首に妻が腕を回し、少しだけ踵を上げてキ
...省略されました。
そして4日間の夏の帰省が終わりました。帰ってきてから私は妻に全て親父から聞いたぞと伝えました。俺に隠れて3年間も親父と関係を持ったこと。その関係はまだ続いてること。
妻は驚いた表情を浮かべ、涙を流し始めました。妻は欲求不満だったこと、一回だけ、一回だけと自分で決めてもどんどんのめり込んでいってしまった事。次第に私の親父の事を1人の男性として見てしまうようになった事。妻から全てを打ち明けられました。ただ私との家庭は崩したくないと。離婚も出来ればしたくない。でももし私が離婚を望むのなら妻はそれを飲むと涙ながらに話してくれました。
私はそれから1ヶ月程今後のことを考えて結論を出しました。結論は離婚はしませんでした。娘のこともありますし、親父とは縁を切るという形で終わりました。あの年からは全く地元とは、実家とは交流は取っておりませんでした。しかし2年前です。2年前の初夏、お袋が亡くなり地元へと私、妻、娘で3人で久しぶりの帰省をした際のことでした。
「久しぶりやな。元気にしとったか。」
「まあな。前に言っただろ。アンタとはもう縁を切るって。息子の嫁に手を出すなんて正気の沙汰じゃないぞ。」
「すまんと謝ったじゃないか。また蒸し返すようなことをすな。どうだ。久しぶりなんや、俺の家泊まってきいや。」
「泊まらないよ。駅前のホテルもう予約したし。」
私は親父が強引に私達家族を泊めようとしてくるのを、拒否してその日は駅前のホテルで泊まることになりました。
葬儀が終わり仕方なく一度、実家へとお袋の荷物を置きに行った所相変わらずラフな格好をした京子さんがいた。妻と娘はホテルへと先に戻して、親父に会わせぬよう私は1人で向かいました。
「吾郎さんの息子さんよね。久しぶりやな。」
「どうも。」
「なんや縁切ったんやって?奥さん、吾郎さんに寝取られてもうて。」
煙草をふかしながら脚を組み土間で私に話をしてきた。そしてショートパンツのポケットからスマートフォンを取り出して、何度か画面をタップしてから私に写真を見せてきた。妻と京子さんが下着姿で体育座りしてる写真だ。
「よう撮れてるやろこれ。吾郎さんに見せてもろた?」
「いや、見たことないですけど。もう終わった話でしょ。その写真も保存してないでさっさと消して下さい。」
「じゃあこれも見たことないやろ。この写真なぁ吾郎さんのお気に入りなんやで。ウチとはこんな写真1度も撮ってくれたことあらへんのに。」
続けて見せられた写真は、畳の上で胡座をかいて座る親父に右腕を絡めて照れ臭そうにしてる妻サツキの姿だった。お互い服を着ていてどこもいやらしい写真では無かったが、私にはこの写真がとても印象強く残っている。
妻はカメラに左手を向けている。左手の薬指には私との結婚指輪が嵌められていない。替わりに妻が着けているのは私が1度も見たことがない別の指輪だった。
「正直、歳の差婚をした男と女にしか見えへんよねぇ。ウチが言うのもなんやけど凄いお似合いの2人だと思うわ。あのお祭りの日凄かったんやで。もうウチのこと放ったらかしで、2人で激しく求めあって。あれは凄かったわぁ…。」
確かにあれから今日至るまで私達家族と親父は一切関係はない。完全に縁を切った。ただ今もたまに考えてしまう。妻は私の知らないところで親父と繋がっているのではないかと。妻が今、本当に愛してるのはもしかして…。