私は、31歳の会社員。
真理(28歳)とは、職場で知り合い、2年前に結婚しました。
私は、いわゆる草食系男子、かつ、地味で、誰がどう見てもモテないタイプ。
それに引き換え、色白清楚系の顔立ちに巨乳というスタイルで社交的だった妻は、入社当時から職場でも人気があり、私と結婚するから寿退社するという話が出た時は、「一体、どんな弱みを握ったんだ?」と言われる始末でした。
その後、昨年の5月に待望の第一子も産まれ、すべてが順調でした。
昨年の10月に私の上司になったのが大木部長。
この時は、私の人生の歯車が狂い始めたことに気付いていませんでした。
大木部長は、現在39歳という年齢ですが、役員からの信頼も厚く、かなりのやり手。
色黒で筋肉質と見た目だけでなく、仕事の進め方も体育会系のノリがあり、グイグイ引っ張っていくタイプ。
女性社員には気さくで優しいので、女性社員からは人気がありました。
人気がある逸話になると思いますが、毎年、バレンタインデーになると、部長の机には、女性社員のチョコが何個も置かれるのが風物詩でした。
この大木部長は、かつて、真理の上司でもありました。
昨年の11月、そんな部長の部下になって初めて2人で地方出張に行くことになりました。
順調に仕事が終わったので、2人で地元で人気の居酒屋に行きました。
一仕事終えた安心感からか、部長と同じペースで地酒を飲んでいるうちに気が大きくなったのでしょうか、結構なバカ騒ぎをしてしまい、部長から
「真理ちゃんにも、そんな痴態を晒しているのか?」
と言われました。
真理ちゃん。。。
そう言われて、ずっと前から気になっていたこと、聞きたくても誰にも聞けなかったことを、つい口にしてしまいました。
実は、真理との結婚が決まった直後、会社でトイレの個室に入っていた時に、部長や妻と一緒のグループだった人の会話を聞いていました。
「真理ちゃんってさ、部長と付き合ってたんじゃねーの?」
「俺もそう思った。部長と別れたんかな?」
「他の男と結婚するって、そういうことだよな」
「でも、何であんな男なんだろうな」
「それは確かに笑」
「あの…部長…ちょっと聞きたいことがあるんですけど?」
「なんだ?」
「怒らないでください…」
「だから何だよ」
「昔、真理と付き合っていました?」
「なんだそれ?」
「結婚前、そういう噂を聞いたことがあって…」
「好き勝手、言うやつがいたってことだろ?真理ちゃんに聞いたんか?」
「そんなわけないじゃんって言われましたけど」
「だったら、その通りだろ?」
「ですよね…」
部長がボソッと言いました
「昔だろ…」
「昔…」?そう聞こえました
「あの、どういうことですか?」
「何が?」
「今…部長が昔って…」
「聞き違いだよ」
酔っていた勢いか、その日、部長に食い下がってしまいました。
部長が私を睨みつけて
「お前もしつこいな!そんなに聞きたいなら言うけど良いのか?」
その態度に押された私は、
「はい…」
と小さな声で答えると、部長が怒った口調で言いました。
「真理は俺の女だったよ。これで納得か?」
パンドラの箱を開けてしまった瞬間でした。