もう4年も前になりますが、親が残した長屋の物件。
壁を挟んで3軒分有、内の1軒は親が住み、残りの
2軒を賃貸していました。
入居者も2人いましたが退居されていき入居者も決まらい
状態でした。物件の維持管理と手間も負担に感じた私は
2軒分の壁を撤去しリフォームしました。
私自身もアパートを借りていたので、リフォーム後は
そこに引っ越しました。逆に、親が住んでいた1軒だけを
軽く手入れして賃貸として残しました。
そんな生活がスタートしたかと思うとコロナの流行が始まりました。
私も在宅ワークをする状態にまでなって行きました。
それまでは家に居ない時間帯の生活のおかげでしょう。
新しい出会いと、生活が色々な意味で待っていました。
学校の正門前通りを抜けた道沿いの直ぐ近くにに私の家が有ります。
通学の時間帯には、父兄の人が子供を車で送っていました。
そのためか、道沿いに数台の車が入れ替わる様に停車し場合によっては
私の家の前で車を停車する日もありました。そんなある日の事でした。
決まった時間に子供を迎えに来ている車がある事に気付きました。
その時点では何の興味も無ければ、その親子とも無関係でした。
ある日、私は正門通りから道沿いに出た直ぐ角にある自動販売機で
飲み物を買おうと家を出ました。少し小雨が降り出していました。
自動販売機から少し離れた場所に一人の女子学生が立っていました。
ふと思いました。もしかしたら、時間的にもあの迎えに来てもらって
いる子かな。その子の前を通り過ぎ私は自販機で飲み物を購入。
帰り際に少しだけですが、顔を会せ彼女の方から軽く会釈をされました。
小柄で、ごく普通の女子高性という印象でした。
家に戻り少しすると、小雨だった雨足が少しひどくなったなと
思う雨音に変わりました。それと同時に会釈をした子の事が気になりました。
私は自然と傘を持って表に出て確認しました。まだ迎えを待ち
辛うじて雨宿り出来そうな軒下に立っていました。私は家に戻り
使っていない傘を持って彼女の所まで急ぎました。
「これ、使いなさい。」 私が初めて掛けた言葉でした。
彼女も驚くと言いますか、傘を受け取るのを戸惑っていました。
初めて会った人に、急に傘を差しだされたのですから。
私は、傘を広げ彼女に持たせました。
「すみません。ありがとうございます。お借りします。」
「遠慮なく使いなさい。」
「また返しに行きます。家ですが、近くですよね?」
「返さなくていいよ。」コンビニで買った透明の安い傘なので。
数日が経った夕方でした。ピンポンとドアホンが鳴りました。
モニターを見ると、あの子と母親と思われる2人が映っていました。
玄関を開けると「先日は、ありがとうございました。」と言って
貸した傘を渡してきました。続けて母親から「先日は、娘がお世話に
なりました。」と言って、紙袋を手渡されました。逆に私の方が
恐縮しました。コンビニの傘一つだけでしたから。
この出来事が切っ掛けで私の私の生活が変化していきました。