少し路地を入った所にエミルの家がありました。私がエミルを抱え、彼女も一緒に家まで来てもらいました。木彫りの表札が掛かっていました。表札に二人の名前。エミルの名前は、その横に別の表札で…。表札にはエミルの名前しかありませんでした。その理由も直ぐに分かりました。もう夜の11時を回っていました。 彼女が家の呼び鈴を押しました。「夜分にすみません。エミルちゃんのお家ですか…」インターホンの向こうから年老いた女性の声で「はい。そうですが」「エミルちゃんをお連れしました…」暫くすると、中から老夫婦が出て来ました。 お爺さんはの印象は、もの静かな優しい感じでした。お婆さんは、言葉使いも丁寧で、品のある喋り方をしていました。私の背中に抱えているエミルを見て、ビックリしていました。彼女が事情を説明してくれました。 私一人だと信用性もなかったかも。一旦、エミルを玄関の上り口の降ろしましたが、ご老人夫婦で運ぶにはと思い、私が再びエミルを背負い部屋まで運ぼうとした時でした。あろう事か、エミルが私の背中で寝ゲロを…。 最悪~でした。着ていた仕事用のスーツは、エミルの寝ゲロで大変な事に…。お婆様も慌てて、拭くものを持ってきましたが、このままタクシーに乗れる状態ではなくなりました。 一旦、エミルを降ろし服を脱ぎ今度はエミルをお姫様抱っこし、部屋まで運びました。彼女も部屋まで来てくれました。エミルの服も寝ゲロで汚れていました。私は、部屋を出て彼女とお婆さんでエミルの着替えをさせました。 取りあえず一段落しましたが、見るとズボンにもエミルのゲロが…。タクシーを待たせている事を忘れていました。なぜだか私は「タクシー待たせるし、今日はもここで…」といい彼女をタクシーまで見送りました。最後までカッコつけたかったので、タクシー代を運転手さんに渡し、おつりは彼女にと…。彼女を送り出し、エミルの家まで戻る途中に思いました。【告白すら出来なかったよ。 なんで先に帰らせたんだろー】ドタバタしていたので気付きませんでしたが、髪にもエミルのゲロが…見ず知らづの方の家で風呂を借りる事にまでなりました。風呂から出ると、綺麗な作務衣が置かれていました。お爺さんが着ている物らしく、サイズも問題ありませんでした。その夜は、タクシーを呼んでいただき改めてお伺いする事に…。汚れてスーツと服は、置いて帰りました。 それにしても、バランスの悪い格好で帰る事に…。着ている物は作務衣。履いている靴は裸足に革靴。タクシーを降りて部屋に戻るまで、人に会わないか心配でした。帰りに私の連絡先を教えておきました。 翌朝、登録をしていない携帯番号から着信がありました。 エミルからでした。「エミルです。昨日は…。ありがとうございました。」「あーエミルちゃん? 初めましてと言うか、まー昨日は大変だったけど 大丈夫だから。 わざわざ連絡ありがとね。」「おじいちゃんと、おばあちゃんに朝から大目玉だったよ。 お兄ちゃんにも迷惑かけてしまって。 お姉さんも居たって聞いたけど お姉さんいもよろしく伝えてね。」「分かったよ。それより飲み過ぎはダメだぞ。」「スーツのクリーニング出来たらまた電話します」「了解。また連絡してね」 初対面とは思えない感じで話が出来ました。週末の出来事だったので、休み開けに彼女とも顔を会わせる機会がありその後の事を説明しました。 思い出し笑いを彼女はしていましたが、私にとっては、告白のチャンスが無くなった夜なので、笑えませんでした。数日して、お婆様から電話がありました。「先日は、ご迷惑おかけしました。クリーニングも出来ました。エミルに持って行かせてもと思ったのですが、もしよろしければ、お食事に招待しても…。」「気を使わなくていいですよ。 帰り道なので週末でも取りに伺いますから」食事に招待されましたが、あの夜エミルの事が切っ掛けで知り合いになったとはいえ、はい。ご馳走になります。とは言えませんから。食事の招待を縁了した翌日エミルから電話がありました。「おばあちゃんの、お誘い断ったって…」「違うよ。流石に悪いだろと思って、縁了したんだよ。」「そうだったの。それなら今晩エミルと食事してよ。」
...省略されました。