(episode2)「視姦プレイの刺激」
師走の喧騒が街も人もすべてを飲み込んでしまったかのような12月。私も忙しい日々を過ごしていた。特に年末年始は忙しい。毎年休みは元旦だけだ。さすがに疲れを感じる年齢になってきたことは否めない。
精力も衰えてきているはずだ。どんなに抗おうと、その放物線は右下がりに落ちていくことに間違いない。
だが、それに反比例するのは妄想力だ。精力が肉体的要素に影響されるのに対して、妄想力は肉体的要素に影響されない。いや、むしろ肉体的要素を補う為に、妄想力が豊かになる気さえする。
それは性行為を経験する前(童貞)の想像力に近い。だが決定的に違うのは、妄想力はその者の性体験や性癖によって大きく左右されることだ。
私の妄想力は、過去の性体験により元々特異なものであったが、彼女との逢瀬を重ねる度にさらに歪んだものとなり、まるで肉体の衰えを阻むかのように大きく膨らんでいった。
前回の野外露出で、私の中に沸き上がった「ある想い」
それは…
(もっと他の人に、彼女の恥ずかしい姿を見てもらいたい)
もう「見られているかもしれない」という不確実な刺激ではもの足りず、「見られている」という確実な刺激を求め始めていた。
まずは彼女を晒す場所を探した。見つけるのに時間は掛からなかった。R4とJRM線が交差する辺りにあるT書店だ。アダルトDVD、雑誌、アダルトグッズを取り揃えた店舗で、店内は書棚が数多く配置されており、防犯カメラはあるものの、死角も多い。
当然、男性客も多く、しかも性欲に満ちている。こうした男達に見せたいのだ。自分の自慢の彼女を。
多くの人々には理解し難い行為だろうが、誰よりも大事で、誰よりも愛し、誰にも渡したくないと思えば思う程、私は彼女の素晴らしさを他の人とも共有したいと感じ始めていたのだ。
その日も彼女は、いつものように無邪気な笑顔で現れた。これから起こる事を何ひとつ知らずに。
『おまたせ~、寒いね~』
長く綺麗な彼女の髪は12月の冷たい風に当たり冷えきっていた。私は冷たい身体を暖めるかのように抱き寄せ、そして熱いキスを交わした。
「これ、付けて」
勇気を振り絞り差し出した手には、黒い小さな玩具があった。そう、この日に備え用意した「飛びっ子」だった。
『これ…入れる…のね』
彼女もそれがどのようなモノであるかは理解していた。コートのベルトを外し、今日の服装が露になった。タイトなミニスカートは座席に座っただけで、下着の色が確認できた。
「今日も素敵だ。さぁ、自分で入れて」
『あ…はい…』
私の指示に素直に従う彼女が愛しかった。
彼女の表情が一変したのはその直後だ。私の手元にあるリモコンのスイッチをONにしたと同時に、彼女の瞳が虚ろになった。
彼女の顎が微かに上を向いた気がした。太腿を震わせながら膝を閉じた。吐息が漏れている。感じているのだ。
信号で停まる度にいつものようにキスをした。そして同時に彼女の性器に触れた。冷えきった身体も既に熱く火照っているのがわかった。
「もう濡れているね』
少し意地悪な言い方で彼女を覗き込んだ。
『あぁ…早くほしい…』
押し寄せる快感の波に耐えながら、彼女はねだるように私の股関に手を伸ばしてきた。そんな自分が恥ずかしいのか、俯いたままだ。
「ちょっと寄るところがあるんだ」
『えっ!?どこ…?』
私は黙ったまま車を走らせた。国道脇にある派手な看板の店の駐車場に入った。車が数台停まっている。
(しめた。お客がいそうだ)
彼女は不安そうに入り口を見つめる。
「ついてきなさい」
『これっ…。つけたままですか…?』
許しを請うように私を見つめた。
「そうだ。そのコートを脱ぎなさい」
彼女は観念したかのようにコートを脱いだ。
(凄いっ!いやらし過ぎる!)
さっきまで座っていたので太腿辺りしか見てなかったが、胸の形がはっきり解るような服だ。
車から降りる際に、スカートを下げた。座っただけでお尻が丸見えになる程のミニスカートなのだ。
彼女は私の腕にしがみついた。一人では歩けない程、玩具は彼女の性器を刺激していた。
店内に入ると私は周りを見回した。店員はカウンター内で作業している。入り口近くの雑誌コーナーにいた客が、いち早く彼女を見つけた。
この店にはあまりにも不釣り合いな女性に、客は少し戸惑ったような素振りをした。
店の奥にすすんだ。そこには多種多様なAVが陳列してある。私は玩具の刺激に彼女が麻痺しないように、スイッチをOFFにして、彼女を休ませた。
『AVとか見る?』
突然の彼女からの質問に戸惑う私に、さらに彼女は語り掛けた。
『どういうジャンルが好きなの?』
もう見る事が前提になっていた。彼女の男を見る目は確かだ。
「いろいろかなぁ~、だけどいかにもAVアイドル物みたいのには興味ない」
私の戸惑いが答えに表れた。まったく、どういうジャンルが好きなのかが、わからない答えになってしまった。本当は凄い見る。凄い好きだ。しかもNTR系や、複数系が多い。そんな事を彼女に言える訳ない。正直に答えて彼女に嫌われることに耐えられる程、私はタフではないのだ。
『NTR系とかは?』
「えっ!あ、まぁ、嫌いじゃないけど…。」
見透かされたような彼女の言葉だった。私の言動から私の性癖を既に見抜いているのか?いや、もしや彼女自身がそういった性癖を……。
私はその後の会話が見つからず、このままではプレイに差し支えると考え、玩具のスイッチをONにした。
彼女がまた背筋を伸ばすように硬直した。膝を擦り合うようにモジモジしながら、ウェストからヒップにかけて波打つようにくねらした。
『ん…。また…』
通路の反対側に先程とは違う客がこちらをチラチラ見ている。どうやら気付いたようだ。私達が変態カップルであることを。私はその客に気付いていない振りをしながら、彼女を抱き締めキスをした。
客がこちらを見ているのを彼女の頭越しに確認できた。その客に見せ付けるように、スカートを捲り上げ始めた。焦らすようにゆっくり、ゆっくり。
彼女は玩具の振動とキスによって、既に理性が効かなくなっていた。今にも声が漏れそうだ。キスで口を塞ぐことで、なんとか声にならない状態を維持した。
ほどなく、完全にTバックの形の良いヒップが露になった。彼女も無意識に私の性器をズボンの上から触っていた。
客は私達に気付かれないようにゆっくり、近付いてきている。もう5~6mの距離だ。私はさらに彼女を攻めることにした。
下着の中に手を入れると、既に玩具に彼女の愛液がまとわりついていた。愛液まみれの玩具を外しポケットに入れ、その代わりに私の指が彼女の性器を刺激しはじめた。
彼女はさらに身体をくねらせる。しかし拒否はしていない。むしろ求めてるようだ。なぜなら私の指を招き入れるかのように、局部を突き出した。
私の二本の指は誘われるがまま、彼女の中に吸い込まれていった。膣が収縮を繰り返しながらさらに奥へと吸い込んでいった。
私はゆっくりと動かしはじめ、そして彼女のポイントを探り当てた。
ビクっと彼女が反応した。もう観念したかのように身を任せている。彼女のポイントを刺激しはじめると、彼女は手を口に当て必死に声を出すまいと耐え続けた。
私の指の動きが激しさを増すと、彼女は全身を痙攣しはじめた。もう客にも聞こえるほどの声が出ている。客は既にガン見の状態で3m程の距離にいる。
「男がお前のイクところを見てるぞ。イヤらしい女だ」
耳元で囁いた瞬間、彼女は絶頂を迎えた。痙攣が止まらない。尋常ではない痙攣だ。へたりこんでしまった彼女を抱き抱え、別の通路に移動させた。どうやら店員には気付かれてないようだ。
このような場所で、他人に見られながら絶頂を迎えた彼女を誉めるように私はキスをした。彼女も私の気持ちを理解したようだった。
そしてアダルトグッズコーナーに移動した。場所をお借りした以上、場所代を払うのが私の流儀だ。手錠を購入した。安いせいか妙に重く、味気ないデザインが逆に卑猥だった。
「これ、買ってきて。すぐに使うから箱から出して下さい。と言いなさい」
『え…。あ…はい』
私はお金を渡すと離れて見ていた。意外にスムースに購入している。
『買ってきた!』
無邪気だ。可愛い。実に可愛い。
子供を誉めるように頭を撫でた。
雑誌コーナーではまた別の客がいた。もっと見せつけたい!もっとイヤらしい目で見てもらいたい!と思った。
目で合図すると、彼女はゆっくりその客に近づいた。
近付いたものの、残念ながら反応は薄かった。よくあることではあるが、見てはいけないと思い遠慮する方がいる。少なくともこんな場所(アダルトショップ)で、こんな女性がいた場合は、ガン見するに限る。是非、お願いしたい。
その夜ベッドの上で行為をしながら、私は彼女に何度も問いただした。人前ではしたない姿を晒したこと、人前でイッてしまったこと。
そして、人前での絶頂を上回る快感を、彼女に与えるべく、何度も何度も突き上げ続けた。
突き上げ続けながら、私は1つの疑念を彼女に対して感じ始め、それが頭から離れなかった。
それは、私でなく、他の男でも彼女は同じように感じてしまうのか?というものだった。
「そんなはずはない!」と願う気持ちと、それを確かめたいという気持ちの葛藤が私を苦しめた。
その苦しみから逃れる唯一の方法として、私の頭に浮かんできたものは、一番大事な彼女の身体を、他人に触れさせることしか見つからなかった。そしてその決心は既に私の中でついていた…。
(episode3)「第三の手の刺激」に続く