空が明けてきた。リビングでコーヒーを飲み、少し落ち着いた。目を覚まし、下りてきた妻。「寝てないんだぁ...。大丈夫ぅ?」私の顔を覗き混んだ。目を合わした。すっぴんで幼く見える。疑いようのない顔。が...生返事しか出来なかった。自分の中の蟠りを封じ込められなかった。「ほんと(体)大丈夫?」の声、言われて余計に不機嫌に接したくなった。仏頂面のまま家を出て勤務先に向かった。当然のように仕事にはならない日。体調が悪いと言い訳し早い目に帰宅した。妻が風呂に入るのを見届け、テープの続きを確認した。はめ撮りではなかった。カメラを固定していた。これも隠し撮りか...。灯りも暗く鮮明でなかった。「本当に妻か?...」何度も確認した。間違いなかった。激しくはない。男と女がベッドの上で重なり、普通に交わっているだけだった。しかし...何で...こうも普通に...。どんどん気分が重たくなった。映像が消えたのに気付かなかった。我に返り「本当に本当に終わりか?...」とテープの終わりまで早送りした。もう何も映らかなった。「やっと見終えた...」というだけの満足。それ以上に不満足だった。「Tokorotenに会わないと...」携帯を手に持った。妻が風呂から上がる階段を上がる音がした。溜息が出た。メールでの連絡。待ち構えていたかのような早い返信。「明日の夜に(前に行ったTokorotenの)店で」と決まった。Montaも来ると書いてあった。「明日だ...」仕事用の革のアタッシュ。テープを纏め入れ、鍵をした。急に気も力も抜けた。体力も思考も限界だった。ベッドに横になると気を失うように朝まで眠り込んだ。翌朝はスッキリしていた。「復活したね(笑)」の妻の冷やかしにも愛想良く応えられた。安心し喜ぶ妻を見て、自分の蟠りが小さくなり、消えかけてきている事に気付いた。気分が晴れていった。仕事もそつなくこなせた。予定通りにTokorotenの店へと高速にのった。車を走らせていると、不思議に男たちに対する感情も穏やかになっていった。知らせず済ます事が出来たものを...わざわざ...。それは私が望んだから...。紳士的に対応してくれて...顔も所在をも晒し...会ってもくれる...逆上しててどうする...(妻を味わったのだから)感謝するとは言い難いが...憎むとか恨むとか...はないな...昨日、一昨日の自分とのギャップ...2人に会う前、そう思うようになれて良かったと苦笑いした。高速を下り、見覚えのある通りに出た。車を預け、店に向いながら電話した。2人は店の外で出迎えてくれた。中に入った。缶コーヒーが出てきた。何から何と切り出そうか...戸惑っていた。Tokorotenが口火を切った。「見ましたか?」「ええ...見ましたよ。10巻全部...」「上手く撮れてましたかぁ?それが心配で...」「ええ、頑張って撮ってくれたんだぁって感じましたよ」「良かったです...」「でも...凄いですよね。(妻が)気付いてないんだから...」「まぁ...そういうの(隠し撮り)じゃないと撮れないし...」「きっとそうでしょうね...それに見つかったらそれまでだろうし...」「そうそう(笑)...デブ(Oyakata)が(Sachikoに)バラしそうになって肝冷やしましたよ(笑)」「へぇぇ(笑)あぁ、若い2人とはそれからは?」「いやぁ、連絡取ってないですね。デカイだけの子供で(笑)」「あはは、そんな感じに映ってましたね(笑)」「あいつら、撮られるの嫌がって隠れてやるんですよ(笑)...」「あっそうなんだ...カメラのない所でやってたんですね(苦笑)」心の中で舌打ちした。「こそこそしてね(笑)でも...Tokoroさんは...堂々とでしたよね?(笑)」とMonta。「はぁ?...だろうか、どうだか(笑)」とTokoroten。「堂々としてましたよ(笑)2人とも...」と私も続けた。その言葉に2人は見合い、少し沈黙した。「そうですかぁ(苦笑)そう映ってたならそうでしょう...(笑)...」「あぁ...詳しくは訊かない方がいいのかな?...訊きたいけどなぁ...(笑)(妻を)堕とし易かったのかなって...」「うーん...まぁ...奥さん...バブルっ娘だし...」
...省略されました。