ようやく連絡が来たのは午前0時を少し回った時でした。
かかって来た電話はかずくんの番号でしたが、出てみると真美でした。
「ごめんねゆうちゃん」、私は怒りたいのか泣きたいのか、よくわからない感情のまま「もういいの?」と聞くと、話したい事があるから迎えに来てと言われ、ホテルへ2人を迎えに行き、かずくんが車を止めてる場所まで行き、降ろして帰ろうとしました。
が、着いてもなかなか降りようとしないかずくん。
真美と後部座席でコソコソと話してるみたいでしたが聞き取る事は出来ませんでした。
しばらく私は無言のままでいましたが、何がどうなってるのか状況がわからず、色んな妄想が頭をよぎり不安いっぱいでしたが、何も話さず待ちました。
しばらくすると「今までありがとうございました」と一言つぶやき、かずくんは去って行きました。
家に帰る途中の真美は終始無言でしたが、私の手を強く握りしめていました。
部屋へ入り私から「話しって何?」と聞くと、「かずくんがどうしても真美と離れたくないみたい、真美も離れたくないけど、ゆうちゃんと離れるのはもっと嫌!
かずくんとは、ゆうちゃんに黙って今までみたいに2人だけで会おうって何度も言われて、何度も断ったけど納得してもらえなかったから、最後はわかったって答えた。
だからかずくんが最後に言ったのは嘘。
真美はどうすればいいと思う?」今にも泣き出しそうな真美を見て、「俺は俺の事を愛してくれる真美が好き。
俺の事を愛してくれる真美と一緒にいたい。
誰の事を愛そうと真美は真美だけど、俺はそんな真美と一緒にいるのは無理や」と、一言だけ残し真美の部屋を出た。
いつもならどんなに喧嘩しても、帰ろうとすると力ずくでも必ず止めようとして来た真美でしたが、その日は何も言わず、止める事もなく、帰る時に必ず来てた「気をつけてね」のラインもないままでした。
連絡もせず、連絡もないまま次の日、真美の部屋を覗きに行くと、いつも私が車を止めてる場所へかずくんの車が。
私は頭の中が真っ白になり、とりあえず真美に電話をかけようとしましたが、出なかったら?
出ても嘘をつかれたら?
色んな事を考えましたが、そのまま帰る事も出来ず、はっきりさせようと思い電話しました。
色んな不安はありましたがすぐに電話は繋がりました。
何て言えばいいのかわからず「もしもし…」
「もしもし」2人が繰り返していると真美から、「今かずくん来てるからゆうちゃんも来て欲しい」
聞きたい事と言いたい事を真美があっという間に片付けてくれました。
少し時間を置いて部屋へ行きインターホンを押すと慌てたような声で真美が「ちょっと待ってね」
しばらく時間がたち鍵が開き、出て来たのはかずくんでした。
その時はもう嫉妬を超える憎しみのような感じに変わっていました。
部屋へ入るといつもの部屋着で髪の毛ボサボサの真美が、布団を整えながら私に、「早かったね」。
私は「ごめん、途中だったみたいだね!近くにいたから」
真美は苦笑いを浮かべ無言でした。
かずくんに「こっちへ来て座って下さい」と言われましたが、とてつもなく大きな違和感と腹立たしさを感じながらも、もう私がお客様の立場なんだろうな…と感じ、素直に応じました。
三人が席につき話しを始める冒頭で私が真美へ質問をぶつけました。
「最後にかずくんと会いたいって言って行って、その時から気持ちは変わった?」
真美は「少し変わったけど…ゆうちゃんと離れるのだけは絶対イヤ
かずくんと繋がってるのをゆうちゃんが許してくれないならかずくんを今すぐ切る」
曇る表情のかずくんと、複雑な心境の私。
「さっきと言ってる事違う!」少し腹を立ててるのか声を荒げて言うかずくん。
「さっきはかずくんの事が怖くて…昔ね、元彼からDVを受けて少し殴られるだけで凄く怖くなって何も言えなくなるの」
私はその事を何度も聞かされていたから知っていたが、それよりも少し殴られたって…
「真美、殴られたん?」そう聞くと、首をタテにふりました。
私はもう我慢出来ず、かずくんをボッコボコにして、気付くと手錠がかけられていました。
連行される私を見る2人は嬉しそうで、かずくんは真美を抱きしめながら何度もキスを交わしていました。
その時にようやく気付きましたが、もう遅い…。
彼女がまだ帰りません。
逆を言えば
私はもう帰れません。
~完~