交わす瞳の中で、何か言い知れぬ
乾いた感情がそこにはあった。
自分の意志には関係なく、夫の理不尽な欲求で、
ここに連れて来られた私、を訴える目。
気の強さは出せないにしろ、男にキツさを感じさせる
強さは、ややぶっきら棒さを感じ、展開に不安を
感じた。
「ご主人とは、どちらで知り合ったの?たしか、
学生の頃、サークルの先輩後輩だったっけ?」
あなたたち、カップルの馴れ初めか、別の人の
馴れ初めだったか、忘れてしまった様な、問いに、
「あっ、実は、出会い系だったんですよ。」
っと、手を口に当て、照れながら笑った。
上目遣いに、こちらに視線をあてる眼差しは、
顔立ちから、確かにキツい印象を与えるのだけれど、
会話がすすんでくると、目尻がさがり、
口許のホクロがセクシーに、彼女の薄く濡れた
ルージュから言葉が出てくる。
彼女の興味、夫との事、好きなカフェの話
興味の無い女性との会話は、眠くなるが、
怜との会話は、会話のキャッチボールが
なめらかで、愛らしい視点も、興味をそそる。
小一時間経ったのだろうか。
赤ワインを二人で飲みながら、
ふと、今回の、夫の希望である、話について、
切り出せなくなっている、その刹那、
「怜ちゃん、隣に来ない?」
思いがけない、私の提案に、
少女が、俯いて、何かを受け入れたときの、
あの、反応の様に、顔を下にして頷いた。