始まりは2年半前からでした。
電車に乗っている時に密着した俺の背中に、何かモジモジした動きを感じていました。
しばらくして後ろから引っ張られる感じと一緒に粗い吐息が聞こえ始めて、そのうちに明らかに変な声と背中にあたる変な感触がありました。
背中を引っ張られる感じが強くなり、首を捻り後ろ側を見て見ると、思い切り近い肩越しに、顔を赤らめ薄目の中では黒目が左上にぶっ飛んで、口が半開きのままパクパクさせている女性がいました。
なんかやばいと思いつつも、驚きのあまり目が釘付けになっているといきなり、うッうッう~ッ! あッあッあーッ!表情が一気にこわばって口が大きく開いてから、下を向いて頭を俺の後ろ脇あたりに押し付けてきて、小刻みに震えながら背中が強く引っ張られました。
そこそこ大きめな唸り声でしたから、周りからも視線が集まって俺と周囲の人が目を合わせる感じになって気まずくなってしまいました。
俺は目線を避けるように窓の外に向かいなおして数秒後に一度緩んでいた背中の引っ張られ感が再び強くなり、俺は恐る恐る振り返ってみました。
するとそこには先ほどより、もっと赤くなり大口を開けてこわばった表情がそこにあり、ものすごくドキドキしてしまいました。
するとガクガクガクと大きく痙攣したかと思った瞬間に表情は一転して急にこわばりが解けて項垂れて、また下を向いてしまいました。
女性の身体の重みが俺にずしっとかかってきていました。
電車の揺れに合わせてかかる重みは、なかなか耐えがたいものがありました。
身体ごと振り返ることができないので背中で耐えるしかありませんでした。
駅に着く最後の揺れで女性の重みは急に薄れました。
ドアが開き流れに乗ってホームに降りたところで後ろから、出発を知らせる警笛に混ざり、ざわざわしてる人々のざわめきが聞こえました。
視線をやると、そこには躓いて転んだ人がいるみたいになっていて、人混みの足下の隙間に横座りになって両手をついて項垂れている女性が見えました。
これが、彼女との始まりでした。