「あれ美味しいですよね♪」
ずっと以前に始め、なんとなく続けていたブログからメールが転送された。
少し前に載せた食レポもどきにレスがついたらしい。
珍しさもあって返信すると、すぐ返事がくる。
もちろんフリメだし名前もM。一応女性だろう…程度に考えながらやり取りをはじめた。
なぜかお互いに相手を詮索せず、淡々とよく行く店の話しなどで一か月も経った頃、
「一度逢ってみたい」
と彼女から持ち掛けてきた。
何も考えずOKし待ち合わせ場所を決め、
「車のナンバーはこれ、外にいるから様子見して良いよ」
と伝え日曜日を迎えた。
無料立体駐車場の端に停めて待つと、数台が通った後に軽が横付けされる。
小柄な女性が降りて頭を下げた。
「こんにちは、Mです」
照れくさそうに口元を押さえた左手に指輪が光る。
「こんにちは。って、人妻さんだったの?」
「あ、はい、あ、人妻ダメ?」
「いや僕は平気というか、大好きです」
と笑うと
「人妻専門なんですか?」
と彼女も笑った。
ゆっくり話したいと言う彼女を後部座席に乗せ改めて自己紹介する。
「美紀25歳です」
「なるほど美紀さんのMなんだ」
「うん…まぁ…」
「ん?でも今日ご主人はいいの?」
「あ~はい、どっか行っちゃったから」
「そう。まぁいいか。可愛い奥様に逢えてラッキーだし」
「なんかドキドキしますね」
「あれ?もしかして不倫になっちゃう?」
その瞬間ビクッと膝を震わせ俯いた美紀は、
「それもいいかなって…」
太ももの中ほどのスカートの裾を摘みながら驚きの返事を返した。
「えっ!あ、えっと…そっち?」
「やっぱりダメですよね?人妻じゃ面倒ですよね」
「いやいや本当にそれはいいけど、美紀さんはリスクあるから」
「私はバレなきゃいいんです。あっちも遊んでるみたいだし…」
「仕返しみたいな気分?」
「もあるし、あと…」
その様子にあまり問詰めるのも悪いかなと思った時、
「合わないんです…感じが」
「感じ?エッチの?」
「う…ん」
「早いとか淡白とか?」
「あの…笑わないですか?」
「うん」
「呆れたりする?」
「しないと思うけど」
「あの…普通…なんです…」
「普通?普通…物足りないって、もしかして美紀さんマゾ?」
膝の上で拳を握り美紀は頷いた。
「そっちかぁ、あ、MってドMの事?」
「おかしいですよね。変な女でしょ」
「いや、人それぞれだし変じゃないよ」