きっかけは、ほんの些細なことだった。
佳代は、友人の飲食店主の妻。
菅野美穂似の、まなざしのきりっとしたなかなかの美人だ。
そのくせ性格はほんわかしていて、友人宅に行くたびに、冗談を言い合うのが楽しみだった。
友人の飲食店主はエロい奴で、佳代との夜の生活も赤裸々に話していた。
佳代を後ろから激しく突いた時の、背中のラインがそそるんだよね、と言っていた。
ある日、その飲食店の3店舗目の開店パーティが開かれた。
俺も当然呼ばれた。
佳代も家族だから、当然その場にやってきていた。
何度も店主宅に遊びに行っているので、佳代とは顔見知りだ。
佳代も俺のことを知っているし、俺のことは尊敬してくれてもいる。
だから、自然と佳代と同じテーブルで飲むことになった。
パーティは、飲食店の社員と、店主の友人で30人ぐらい参加者がいた。
社員は社員で盛り上がり、友人は友人で盛り上がる。
開店祝いなので、どんどんお酒も入り、元々酒の弱い店主もどんどん酔っぱらっていった。
そんな中、佳代だけ、その浮かれた輪の中に入っていない。
元々騒ぎの中にいた俺も、物憂げな佳代の様子に気づき、テーブルに戻る。
「どうしたの」
「ううん、なんでもない」
言葉とは裏腹に、佳代の様子がおかしい。
こういう時は、あまり突っ込んじゃだめだ。あくまでも佳代が自分から話しだすまで待つ。
そっと横に座って、黙ってグラスを口に運ぶ。
しばらくすると、佳代が話し始める。
「うちの家族、ダメかもしれない」
およそパーティの雰囲気とは異なる重たい空気が流れ、若手社員は気を遣って離れて行く。
「どうしたの」
「うちの夫、最近おかしいの。テンション高くて。」
元々店主は、エンジンの壊れた車のような男だ。
お祭り好きで、周囲を巻き込んでゆく。
だからこそ、飲食店を多店舗展開出来たんだけど、家族はそれについて行けないらしい。
佳代は、どちらかというと落ち着いた生活を送りたいらしい。
夫が家に帰ってきて、家でご飯を食べるような。
でも店主はそうじゃない。
店の女の子と飲んで騒いで酔っぱらって。
それを指摘しても「仕事だから」の一言。
要は、不安なのだろう。
店がどんどん大きくなり、夫は家に帰って来ない。
話をしようにも、店の拡大に夢中で話を聞いてくれない。
こういう時は、聞き役に徹する。
そのうちに
「私、ケンちゃんみたいな人と結婚すれば良かったよ。誠実そうだし」
何かを勘違いしている(笑)。
でも、悪い勘違いじゃない。
「え、『みたいな人』なの?俺と結婚したい、じゃなくて?」
ようやく佳代の表情が明るくなる。
「だって。もうケンちゃんも私も結婚しているでしょ」
「いやいや、結婚しているってのは、今この瞬間の状態を示すものであって、明日明後日は独身かも知れないじゃん」
「何馬鹿なこと言ってるの!奥さんに怒られるよー」
そういって俺の肩を叩いてくる佳代。
少し明るい様子を見せたので、夫を呼んで話合わせようと考えた。
この時点では正直、まだ佳代を落とそうなんて思っていなかった。
座席に夫を呼んで、佳代がさみしがっているよ、と伝える。
すると店主は、「なんで開店祝いなのに水を差すんだよ」と、いきなり怒り始めて、すぐに席を立ってしまった。
その場に取り残された佳代と俺。
正直、奴には腹が立った。
こんなかわいい佳代を放置して、何やってんだ。
佳代は「いいの。そういう人だから」と笑っていた。
でも、それは心からの笑いじゃないことは、もうとっくの昔に気づいている。
そのうちに、飲み会はお開きに。
皆、2次会に移動することになった。
「佳代ちゃん、2次会行くよね」
そういって、軽く手をつないでみる。
佳代は、一瞬戸惑ったような表情を見せるが、すぐににっこり笑って「うん」とうなづいた。
単なる友人の奥さんから、獲物になった瞬間は、おそらくこの時だ。
表情や言葉とは裏腹に、繋いだ手から伝わってくるものがあった。
こちらが手を離さないでいる間、佳代もずっと手を握ったままだ。
トイレに行って店の外に出る。
どうやら、店主は別の仲間と、妻とは別の店に行くらしい。
これはチャンスだ。
店の外に出て来た佳代を捕まえ、耳打ちする。
「もう遅いから帰るって宣言しなよ」
「夫、もう今日は遅くまで帰って来ないよ」
佳代は一瞬考えるような顔をしたが、すぐに「うん」とうなづいた。
佳代が「帰るねー」と宣言するのを聞いて、タクシーを捕まえる。
「角を曲がったら降りて」と伝えて見送る。
その後、すぐに俺も別のタクシーを捕まえ、追いかける。
佳代は、指示したとおり、角を曲がったところで降りていた。
「ああ良かった。帰ったかと思ったよ。送るから乗って」
そういうと、佳代は嬉しそうな顔で乗り込んだ。
タクシーの中では、先ほどの続きで夫の愚痴になる。
それを制して、また少し走った、町はずれのホテル街で黙って降りて、手を引く。
少し怪訝な顔をする佳代。
「え!?」
状況を呑み込めていないようだ。
でも、ホテルに入る前、抱きしめてキスをする。
「え、え!?」
まだ戸惑っている姿がかわいい。
「キスしちゃったね。飲んでいる時から、すごくしたくなっちゃった」
そういうと、佳代は少し嬉しそうに笑いながら、こういった。
「いきなりだからびっくりしたよもう」
怒ってない。
この時点で確信した。フラグが立った。
ホテルの入り口に手を引いた時も少し戸惑った様子だったが、この時は無言で少し手を引くと、そのまま付いてきた。
女の子には言い訳が必要だ。
「ごめんね。俺がその気になっちゃったから。」
「びっくりしたよ。でもいいのかなあ」
ダメと言わない時点でOKサイン。あとは押すだけ。
部屋に入って、シャワーを浴びる前に抱き寄せる。
すると、先ほどの戸惑った様子とは打って変わって、唇をぶつけるように吸い付いてくる。
ほっぺたが当たると濡れている。顔を話すと、佳代は泣いていた。
理由を訊くのは無意味だ。
「佳代ちゃん、すごくかわいいよ」
「今日は正直、あいつに腹が立ったわ。」
そういいながら、服を脱がせる。
佳代も黙って脱がされてゆく。
ブラの肩ひもを少しずらすと、それだけで肩から胸にかけて鳥肌が広がる。
予想どおりの敏感さだ。
耳元から首筋に対して唇を這わせると「ああ…」と漏れる声。
少し乱暴に胸をわしづかみにすると、佳代の顎が上がる。
前に店主宅で飲んでいた時に聞いていたとおり、正真正銘のMだ。
ベッドに移動してパンティを半分脱がす。
「えー。なんで半分なのー。いやらしい…」
そういう佳代の半開きの唇が、一番いやらしいと思った。
パンティの中に手を伸ばすと、そこはもうトロトロだった。
指が熱くてとろけそうだ。
そのうえ、ぬるぬると指を転がすと存在感を主張する粒がある。
そこを指の腹で転がすと、また中からトロトロの泉が湧き出す。
「佳代、遠慮しなくていいんだぜ。触ってごらんよ」
ここで呼び捨てに切り替え、少し言葉遣いも乱暴にしてみる。
いきりたったチンコを触るよう指示すると、佳代はその言葉に撃たれたようにビクンとした後、はっきりとした意思をもった指で俺の一物を握りしめた。