「都合が良い日でいいから、近いうちに私の家に晩ごはん食べに来てくれないかな?」
事務員の佐藤さんに唐突にそう誘われたのは、先週木曜日の終業後でした。
佐藤さんは自分より4歳上の37歳で、佐藤さんが弊社の事務員として来た9年ほど前から同僚としての付き合いがあります。
ただ、ある程度のプライベートな話くらいならしてましたが、職場以外で会う約束をするような仲ではありません。
自宅への誘いは驚くほどに唐突な事でした。
「佐藤さんチの晩飯に俺が?何で?」
「来てくれた時に全部話すから、お願い、とりあえず都合良い日に家に来てよ?」
この時点で自分の認識は『佐藤さんは既婚者で高校生の娘さんがいる』でした。
旦那さんと娘さんの写メを見せてもらった事もあります。
「たとえば今日は用事無いけど、旦那さんや娘さんもいるんだよね?」
「うん、いるよ。みんなで一緒に食べるの嫌?」
「嫌とかじゃなく、余計に「何で家族の晩飯に俺を招くの?」って感じなんだけど?」
「来てくれたら本当に全部話すから、今日来てよ?」
「…わかった。晩飯を御馳走になるかはその時の雰囲気で決めるとして、とりあえず行くよ。一回帰りたいから、何時頃にお邪魔すればいい?」
「7時頃でいいかな?何か食べたい物ある?」
「じゃあ7時頃に。メニューは任せるけど、万が一俺が食べなくても無駄にならない物だと気が楽かな」
「承知しました(笑)」
お互い自宅が会社の近くで、自分の賃貸アパートから佐藤さんの分譲マンションまでは徒歩でも多分15分ほどです。
佐藤さん宅に初潜入。
いつもとは雰囲気が違う佐藤さん、写メ通りの旦那さん、写メほどは可愛くない娘さん。
そして何よりも素敵だったのは、食卓の中央にテンコ盛りの鶏のカラアゲ。
「鈴木くん、カラアゲ好きって言ってたよね?」
何の迷いも無く晩飯を御馳走になりました。
それなりに談笑しながらの晩飯が終わり、いよいよ本題です。
「(佐藤さん夫妻を交互に見ながら)それで、今夜俺を晩飯に招待してくれたのは何故でしょうか?」
旦那さん「鈴木さんの事は家内からいろいろ聞いてまして、口がかたいとも聞いてます。絶対に口外されたくない家庭の事情とお願いなんですが、協力してもらえませんか?」
「協力できるかは話聞いてみないと分かりませんけど、口外しない約束ならできますよ」
旦那さん「ありがとうございます。じゃあ私と娘はとりあえず席を外しますんで、事情は家内から聞いてください。家内が話す事はすべて真実なので、私の存在は気にせず、できるだけ家内が望むようにしてやってください」
そんなような事を言い残して、旦那さんと娘さんは別室に消えました。
「旦那さんのあの感じ何?どうしたの?」
「簡単に言うと旦那が浮気してて、夜、家事が済んだ後に避難できる場所がほしいの。それで、9時頃から鈴木くんの部屋に私を避難させてくれないかな?」
「なるほど、旦那さんと一緒に居たくないのね。娘さんは旦那さんの浮気を知らないの?」
「よーく知ってる。私より知ってるよ」
「だったら娘さんの部屋に避難すれば?」
「…食事の時とかの私と娘の空気、端から見てて何か感じなかった?」
「娘さん無口だなぁくらいしか気づかなかったけど。娘さんと仲悪いの?」
「今は最悪かな。向こうが一方的に私に対して敵意丸出しなんだけどね」
「…うーん、旦那さんが浮気で娘さんが反抗期かぁ。避難したい気持ちも分からなくもないね。いいよ、旦那さんもああ言ってたし、今夜は俺んチに避難しておいで」
「ありがとう。ちなみに、今夜だけじゃなく、鈴木くんが用事の無い日は毎晩でも避難したいんだけどいいかな?」
「それはダメでしょ。旦那さんはまぁ自業自得だとしても、佐藤さんが毎晩のように家をあけてたら娘さんとの関係は悪くなる一方でしょ」
「ううん、逆だよ、私が夜いないほうが私と娘の関係は今よりマシになるはず。だから家族会議で私の避難場所を作る事になって、鈴木くんには悪いけど勝手に鈴木くんを推させてもらったの。旦那も素性が分かってる鈴木くんなら私を預けても安心らしいし」
このような事をバーッと言われて、正直よく分からなくなって面倒になってきたので、とりあえずその夜は佐藤さんを自宅に避難させる事にしました。
リビングで佐藤さんの家事が済むのを待っている間、旦那さんがトイレを口実に現れました。
「どうなりましたか?」
「事情はシッカリ聞きましたよ。今夜は奥さんをウチに避難させますね」
「すいません、よろしくお願いします」
申し訳ありません、間もなく佐藤さんが来ますので、一旦ここで終わらせていただきます。
ただの自己満足ですがどうしても最後まで書きたいので、また後ほどレスのとこに続きを書かせてください。