叔母は利子と結ばれた日から4日目に帰らぬ人となった。通夜、葬儀、初七
日とあれから何度も従妹として利子と会いはしたが、お互い何事もなかったよ
うにふるまった。しかし、少しでも2人きりの空間と僅かな時間を探しては、
抱擁しあった。抱きしめるだけで身体が火照り、すぐに息苦しくなった。四十
九日まで何度か利子を抱いた。四十九日の夜、初子の家に集まって慰労会とな
ったが、利子の旦那は来なかった。少し酔いが回ったころ、玄関脇の路地で利
子を抱きしめ、舌を絡ませた。たとえ2~3分でも、何もせずにはいられなかっ
た。
数日後、初子から電話が入った。叔母の葬儀から打ち合わせのために何度か
呼び出されたりしたので、違和感は感じなかった。
「啓太、今夜食事に付き合いなさいよ」
「どうしてまた?」
「今夜は啓太に聞きたいことあるし・・・それに主人出張なんだ。羽伸ばしち
ゃおうかと思ってさ」
「初子さん、ずっと頑張ってたからね。たまにはいいじゃないですか」
待ち合わせは、何度か社用で利用した割烹「四季」。小奇麗な個室がとても
落ち着ける店だった。15分くらい遅れて初子は現れた。
「啓太、いつもこんな店来てるの?いいわね、羨ましいわ」
「そんなにちょくちょくは・・・たまに社用で」
「やっぱ、社長さんは違うわねぇ・・」
「名ばかりですよ。10人の小さな会社だから・・・」
慰労を兼ねてビールから。前菜の小鉢が並び、採れたてのアワビとウニの相盛
を囲むように配されていた。
「初子さん、聞きたいことあるって言ってたでしょ?何ですか?」
「そうね、聞かなきゃ・・・ね」
「何かな、怖いなぁ・・・」
「啓太、四十九日の晩、偶然見ちゃったの、玄関脇で」
「何を・・・・?」
「啓太、利子と何してたの?」
「ああ、利子さん、だいぶ参ってるみたいで・・・」
「そういう意味なの?抱き合ってたでしょ?」
「泣かれちゃって・・・慰める意味で・・・だって、利子さんとこ、だいぶ危
機みたいでしょう?」
初子の眼は明らかに疑いの眼だ。付け焼刃の言い訳など通用しないかもしれな
い。だが、利子夫婦の不仲は初子も知っているに違いないし、それはそれで嘘
ではなかった。
「いやだなぁ、初子さん。僕ら従妹ですよ。それも幼馴染だし・・・」
「そうだけど・・・そうは見えなかったよ」
「やめてくださいよ。いろいろ相談されちゃって。何度も泣かれちゃったし」
「そうよね、男女の仲だなんて疑うほうがおかしいわよね」
初子は半信半疑なのだろうと思った。けれど、脳裏に残るあの晩の「俺と利子
の抱き合う光景」を否定せずにはいられないだろう。そして案の定、そうする
かのようにその晩の初子は酒を煽った。間もなく50歳に届こうという初子に
は、長女らしい険しさがあった。はっきりとした物いい、鋭い眼差しが、2人
の妹を見張った。2人は初子には従順だった。そうして三姉妹はここまで生き
てきたのだ。
「啓太・・・変なこと、するんじゃないよ・・」
酔いが深まったとき、初子の口を突いて出た言葉だった。代行を頼み初子を家
まで送った。初子は寄っていけときかなかった。「線香の一本も上げるのが筋
だろ!」男勝りの口調で俺を引きとめた。居間に接する和室には真新しい仏壇
があり、叔母の遺影が供えられていた。線香をあげ、長ソファーに座ると、初
子が隣に持たれるように座った。
「啓太のところはどうなの?上手くいってるの?」
「まあ、普通には・・・」
「そう・・・」
「あれ!?初子さんちは上手くいってないんですか?」
「あんな亭主・・・もう愛想が尽きたわ」
「どうして?」
「浮気ばっかして・・・最悪よ。もう我慢するのやめようかな」
「そうなんだぁ・・・」
「啓太!利子と変なことしたら怒るからね」
「しませんよ」
「啓太・・・じゃ、私としよ!」
「えっ!?」
「啓太・・・悪いことしよ!」
初子は脚を絡ませ、酒臭い息を吹きかけながら誘った。いつもの初子は消え、
淫らな表情を酔いが加速した。
「ねぇ、啓太、私じゃダメ?利子じゃなきゃダメなの?」
「だから・・・」
「キスして!」
強引に舌を絡ませてきた。右手は俺の下半身をまさぐり、スカートがはだけ、
腰を前後させていだ。スリムな体に似合わぬ豊満な胸が右腕を圧迫した。胸元
がはだけ、ストラップが露わになっている初子の肢体に、次第に引き摺りこま
れた。
「初子さん・・・俺でよければ・・・」
「いいの、啓太がいいの!悪いこと、いっぱいしてよ」
俺は迷っていた。躊躇いもあった。しかし初子は、ジッパーを下ろし下半身を
露出させると、躊躇わず口に含んだ。上下に揺れる初子の頭をじっと眺めた。
大量の唾液とともに初子の舌が絡みつき、抑えがたい快感が小刻みに襲った。
あの初子が、いま、俺のものをしゃぶっている。その信じがたい光景、姿は不
思議だと思った。
「初子さん、俺・・・」
「ああぁ、啓太・・私、悪い女だね・・・でも・・もう・・抑えられないの」
「いいんですよ、初子さん。今夜は2人で堕ちましょう・・・」
「あぁ、して、お願い、思い切り・・・」
ソファーに座らせて脚を思い切りひらき、煌々と光る室内灯のしたで、初子を
あらわにした。むせかえるような初子のそれを含む。舌を小刻みに震わせ、そ
の次には舌をできるだけ奥に差し入れた。
「ああ、いい、啓太、もっとよ、もっと」
「啓太、きて、お願いだから焦らさないで・・・」
初子のどうにもできない気持ちを貫くように、俺は初子に侵入した。しがみつ
き、腰を合わせ、そしてさまようような声を上げ続けた。次の瞬間、俺は初子
の中で放出した。何度も堰を切る。愛液があふれ、子種と混ざり合い、そして
さらにあふれた。そのまま、時の流れを忘れさせるように、抱き合った。
「啓太、ありがとう・・・」
「俺も・・・初子さん・・・」
2人はそのままソファーで重なり合いながら、背徳の谷間に堕ちていった。