俺には幼馴染の従妹三姉妹がいる。高校時代にはよく家に遊びに来てじゃれ
あったものだ。そして俺を男にしたのは二女の利子だった。やがて、時が経ち
三姉妹はそれぞれ結婚して主婦に収まった。俺も大学をでて就職し、27歳で結
婚。それぞれが子供にも恵まれ、集まれば賑やかだった。でも、利子とはどこ
かに秘密めいたシコリが残っていた。すでに20年の年月を経てもなお、あのぎ
こちない甘美な瞬間をお互いに忘れることはなかった。
昨年の夏の暑い日、三姉妹の母親が病に倒れた。離婚後女手一つで三姉妹を
育て上げた気丈な女だった。危篤状態が続き、残業を終えて見舞いに行くと焦
燥しきった利子がいた。人工呼吸器の音が空しく響いていた。
「少し休んだら。このままじゃ利子が持たないよ・・」
「うん・・ありがとう」
「俺が家まで送るよ。少し寝ないとだめだよ」
「じゃ、初子姉さんが来たら交代する。送ってもらおうかな」
「それがいいよ」
ほどなくして長女の初子は大きな紙袋をさげて現れた。4歳上の初子は長女ら
しくテキパキをその場を仕切った。
「利子、啓太におくってもらいな。運転危ないから」
そう言って俺と利子を送り出した。病院を出て駐車場まで歩くと、熱帯夜なの
か僅かな距離でジワリと汗をかいた。まばらになった駐車場で車に乗ろうとし
た時、利子がもたれかかってきた。
「啓太・・お母さん・・・」
「大丈夫、回復する可能性もあるんだから」
「私、諦めてる。いろいろ迷惑かけることになると思うけど、うちの親戚で男
は啓太だけだから・・」
「わかってる。大丈夫、俺がいるから」
「啓太・・・私・・・」
「うん?」
「啓太といると安心するの、少し一緒にいてもいい?まだ家には戻りたくない
の。」
「じゃ、少しドライブでもしようか、気晴らしになるから」
「ごめんね、わがまま言って。主人は優しくないから・・・」
「俺でいいなら、付き合うさ」
もたれかかった利子との間が一層汗ばんだ。甘美な汗だった。
病院通りの商店街を抜け大通りに出ると、左折して海岸通りへ。少し走った
ところにイタリアンレストランがある。食事を誘ったが気分が乗らないらしく
返事はなかった。その先に、港を見下ろすパーキングがあった。「ちょっと止
めて」というので、人気のないパークングのはじを選んだ。通りを通過する車
のライトが眩しくない位置だった。
「啓太、キスしていい?あのときのように・・・」
「利子・・・」
利子は頬に両手を添えて、思いのほか情熱的に唇を合わせた。そして徐々に息
遣いが荒くなり、俺の髪をかきむしった。
「啓太・・・ホテル行こう・・ねぇ、啓太、いいでしょ?一度だけ・・・あの
時のように・・・」
「後悔しないなら・・・」
「啓太、後悔しないから、今日だけだから・・・」
海岸線の小高い丘にあるホテルへ車を滑り込ませる。部屋に入り照明を落とす
と利子はより情熱的に求めてきた。お互いの唇を求めあいながら、そして俺は
利子の胸をまさぐり、利子は俺の股間を撫でた。ベッドにもつれて、遠いあの
日のように、乳首を含み互いの股間を探り合った。緊張してはちきれんばかり
のものを握ると、「あの時と同じ・・・・」と言って、上下に動かし始めた。
利子は自らショーツをとり、情熱の塊を導いた。長い年月が封印した禁断の時
を紐解くように、2人は重なり合った。そして俺は利子の中で果て、なお2人は
離れることはなかった。「あの時のように・・・」利子は上にまたがり激しく
腰を振り続けた。空白の時を掻き毟るように、再び2人は果てた。
(続く)