ああ　美樹

明かりを少し落としたラブホテルの一室。私はソファに座り、彼女を膝の上
に横抱きにする。いつも同じシチュエーションなのに、これから始まる人妻
から一人の女「美樹」に戻れる数時間を待ち望むかの如く、彼女は必ずこの
ポーズを求める。
さっきから、僕の指は彼女の膝小僧と太ももを、軽くなぞるように動いてい
る。軽く身をよじる彼女の体に熱を帯びるのが、ストッキング越しに指先か
ら伝わってくる。
「うん」と、彼女は甘えたように鼻を鳴らす。小鹿を思わせるくっきりとし
た目に、私を睨むような光が宿るのもいつものこと。その時、「本当にこの
子は可愛い」と思うと同時に、「なんで、20も歳が離れた、こんなおっさん
と付き合ってくれるのだろう」とも思う。
「美樹」は今年26歳、かつて私の部下であり、絶世の美女として社内の独身
男性がこぞって恋人候補に立候補する中、大学時代の友人と2年前に結婚し、
退職した。その彼女と初めて肌を合わせたのが3年前。結婚してからも2年、
月に二度の逢瀬を重ねながら、我ながら、よくも妻や彼女のご主人にばれな
いものだと思う。
指先をほんの少しだけ、スカートの奥に進める。しとやかに閉じられていた
彼女の股が少しだけ、ただ、はっきりとした彼女の意思で開かれる。また、
ここから指先は一進一退。次の彼女の行動を楽しみに待つ。
「ねえ」。今度は、消え入りそうな小さな声で、私に救いを求めてくる。私
は左手で彼女を抱き起こしながら、今日何回目かのキスをする。その刹那、
私の指は彼女の核心部に深く侵入する。彼女も指の侵入を迎え入れるかのよ
うに股の力を緩め、私の指の動きを自由にする。
「でも、美樹。美樹が本当に触って欲しいところは、まだまだ、お預けだ
よ」と、心の中でつぶやきながら、指を、ストッキングとその下の白い布に
おおわれた秘部、ただし、彼女が一番求める場所だけを避けるように動か
す。
彼女は、指先が核心部に近づくたびに体をビクッと反応させ、やがて、我慢
の限界なのか、恥じらいを見せながら、吐息とともに、「ねえ」とさきほど
よりも少し大きな声で口を尖らす。「うん？」わざと、はぐらかす私。私の
腿の上に投げ出された、黒のフレアスカートから伸びる細く長い足に指先を
戻す。背が高く、細身で均整な体つき。子供を産み、見事な三段腹となった
古女房とは比べ物にもならない。入社したての頃、彼女が余興でセーラー服
を着て、“なんちゃって女子高生”などとふざけていた頃を思い出した。
「今日はお義母さんには、なんて言って、出てきたの」と私は意地悪く、彼
女が人妻であることを思い出させる。かすれた声で、「お友達とお買い物す
ると言って出てきました」と彼女。「今頃、ご主人は、会社で働いているん
だよ。それなのに美樹はこんなところで、僕とこんなことを」、指をもう一
度、彼女の大切な場所に戻しながら、さらに彼女の羞恥心を誘う。
主人のことを思い出させてくれるなとばかり、頭を振りながら、「ああ」と
今までとは違った、女性としての性感に高まった声を漏らしながら、彼女の
腰は私の指先を求めてくねりだす。
私も、これ以上彼女を切なくさせるのは可哀想だと、声をかける、「どこ
を、どうして欲しいの」と。また、彼女は恨めしそうな表情になり、「ね
え」と私に訴えかける。「うん？何？」また指先を太ももに戻す。「あそ
こ・・・」。半ば泣き出しそうな表情で私を誘う。
「あそこって、どこ？」と私。彼女は「ねえ、お大事を・・・」と耳まで赤
くし、キスをねだるような素振りを見せながら、私の胸に顔を埋めてくる。
“お大事”、共稼ぎの両親の家に育った彼女は、祖母から、女性として一番
大事な器官の名前を“お大事”と教わり、一般的に言われているあの言葉を
口にすることができないと言う。
「美樹、違うだろ。オマンコだろ。美樹のオマンコをどうして欲しいの」と
彼女の羞恥心を更に煽ろうと、私は指をまた彼女の核心部に進める。
「言えない。いじわる。ああ」、恨めしそうな表情を更に強め、「お
ま・・・、お願いします」とまで言うと、にわかに伸び上がるように、私に
身を寄せ、口にむしゃぶりついてくる。
指を彼女のお尻の穴の近くに当て、すっと、彼女のお大事の中心部を後ろか
ら前へと走らせる。びくっと痙攣し、体をのけぞらせながら「ああ、やっ
と」と喜びの声を上げる美樹。
その声に、これからの昼下がりの数時間、美樹を一人の女として解放してあ
げられる喜びが体中を駆け巡る。
右手を彼女の膝の後ろに入れ、両手で抱きながら、よいしょと立ち上がる。
目の前には黒いシーツの敷かれたベッド。ここで、彼女は白い体をくねら
せ、奔放な性に狂う。