ちょうど、約1年前の8月の出来事です。
私は現在32歳の既婚男性です。その夏、私たち夫婦はそれまで住んでいたア
パートを引き払って中古の一戸建て住宅に移り住みました。中古と言ってもま
だ新しく、その町自体が同じぐらいの世代が多く住んでいる静かなニュータウ
ンだったので、移り住むことに決めたのです。
隣近所は、おおよそ私たち夫婦と同じ年齢の夫婦が多く住んでいました。その
うち、A夫妻の奥さん(仮にA子さんとします)は蛯原友里に似た感じのスレ
ンダータイプで、細身のジーンズが似合う清楚な美人でした。3年前、子供が
産まれたタイミングでこちらに移り住んできたということで、うちの奥さんと
も仲が良く、奥さん同士でメールもしていたのですが、私は立場上A子さんの
メールアドレスを聞けず、うらやましいとか思っていました。
私は仕事が営業職なので、会社から帰ってくる時間もまちまちで、定期的に会
議がある日などは、本社が遠い都合もあって泊まりになる事もちょくちょくあ
りました。そんな感じなので、仕事中に携帯を使って出会い系で遊んだりする
ことがありました。そうは言っても、そんなに美味しい話はなく、特に引っ越
してきてからは、仕事も忙しいこともあって全く出会いは無い状態でし
た。(援助とかはやらないので・・・)
それでその1年前の8月、懲りもせずに出会い系でやりとりをしていた所、同
じ市内で相手が見つかり、2週間ほどメールをして会うことができました。そ
の相手は見ず知らずの大学生で、私とはちょっと年齢が離れてるものの、そう
いう人がいいらしく・・・速攻でホテルに行ってハメました。もちろん仕事中、
真っ昼間からですが。
それでその日の夕方、ラブホから出てきた直後・・・多少は注意していたつもり
だったのですが、見事にA子さんの乗った車とすれ違ってしまいました。ラブ
ホから出て私は左折、A子さんは対向車線を走ってきたので、A子さんとモロ
に目があって、「あ」と口を開けて驚いてるA子さんの顔が今でも脳裏に焼き
付いています。
「どうしたの?」とその女子大生に言われたのですが「いや・・・」とか適当な
返事をしつつ、彼女を駅まで送っていきましたが、その間はもうパニックでし
た。うちの奥さんは専業主婦、A子さんも専業主婦で、時間は夕方でしたか
ら、A子さんは買い物に出かけたその足でホテルの前をたまたま通りかかった
のでしょう。そうすると、A子さんはそのまま自宅へ・・・悪くすればそのとき
にうちの奥さんと会うかもしれないのです。
速攻でA子さんの車を追いかけて、うちの奥さんにチクられる前になんとか口
止めをするか・・・それとも、他人のそら似で通すか・・・でも車も見られてるから
厳しいかも・・・そもそも、見かけたからと言って、A子さんがうちの奥さんに
チクるかどうかも分からないし、放っておけばいいのかもしれない・・・そもそ
も証拠はないんだし・・・そう思いつつも、とりあえずA子さんの所に行くこと
しか出来ませんでした。
遠目で見ると、私の自宅には奥さんの車が止まっていないのが分かりました。
幸い、外出中のようです。逆に、A夫妻の自宅前には、A子さんがいつも乗っ
ている、さっきも乗っていた軽自動車が止まっていました。自宅の駐車場に車
を止め、さあどうしようかと心臓をバクバクさせながら思い詰めてると、A子
さんが家から出てきました。
「あっ・・・さっきは・・・どうも」とか妙な挨拶をしてしまいました、自爆です。
その次になにを言ったらいいのか、いいわけをしたらいいのか切り出せず、あ
たふたしてた所で、A子さんがニヤッとして「あの子は誰なんですか?」と
振ってきました。
もう、どうしようもなく言い訳が出来ない状況だったので、話すことにしまし
た。「出会い系で会った」というと、さらに余計な罪状が加算されそうだった
ので、そこはとっさに「うちの会社の事務の女の子」と置き換えましたが。
「へぇ~、じゃあ、時々仕事サボってああいうとこ行ってるんだ~、へぇ~」
と悪戯っぽく言ってきます。しどろもどろになりながら「いや、でもあの子と
は今回が初めてで」とあまり意味のない言い訳をすると「そんなの分かんない
じゃ~ん」と言われたので、ちょっとムッとして、そうだと思い出してそのラ
ブホの会員カードを取り出して「ほら、だってあのホテルのカードの(作成)
日付、今日になってるもん」と、わざわざそのラブホのカードを出してみせま
した。
その瞬間、ピッとA子さんがそのカードを私の手から奪い去りました。別にク
レジットカードでもプリカでもないのでいいと思ったのですが、A子さんはそ
のプリカの日付の欄を見て、またこちらをニヤッと見てから
「○○さんの指紋と日付が入ったカードだね~」
そう言われ、ハッと思いましたが、もう遅かったです。返してっ!と暴れるわ
けにもいかず、そうこうしてるうちにもう奥さんも帰ってきそうです。この状
況で奥さんが車で帰ってきて、A子さんと言い争ってるのを見られたら、それ
こそどうしていいか分かりません。最悪の事態を免れるために、率直に「どう
したら黙っていてもらえますか?」と聞いたところ、「さあ、どうしようか
な~」と楽しそうに、カードをピラピラさせながら家の中に入っていってしま
いました。