日光連山の裏側に甲子高原がある。東北新幹線線で東京から1時間と掛から
ない。とりたてて何が有るという訳ではない。延々と雑木林が続く。山深い
高原である。此処に36年前。一つの恋が終わろうとして始まった思い出が
有る。
私は当時、既に結婚をしていた。詳細は省くが、所謂不倫である。彼女は2
4歳で銀行員。処女だった。是の恋愛は極めて真剣で情熱の限りを尽くし
た。しかし、私たちは結婚のできる間柄ではない。好きだけど別れなければ
ならない。苦渋の決断を私たちは下した。「別れよう。」そうすると彼女か
ら提案があった。「お別れの記念に旅行に連れて行って欲しい。」その結果
が甲子高原だった。雪割り橋を渡った其の先にKホテルはあった。岩燕が飛
び交い、カッコウの鳴き声が木魂す静かな高原ホテルである。此処で彼女は
処女を喪った。当時の私は若く、性器も硬かった。肩を押さえつけて硬い処
女幕を突き捲くった。彼女は痛かったのだろうが、覚悟の処女喪失である、
彼女は必死で私にしがみ付いてきた。感動的な夜だった。性行為は圧倒的な
精神性で浄化されて居た。その後、紆余曲折をするが5ヵ月後には彼女は2
0数回の見合いの後、東大卒の男と結婚をした。「10年したら逢おう。」
の約束は20年後に果たされた。様々なデテールを割愛しているが、いずれ
にせよ20年後に再会した。其の時の再会の性交が、復、甲子高原のKホテ
ルだった。ホテルも古くなっていた。矢張り20年の歳月である。彼女も子
供を3人産み育てている。しかし、私たちの恋は全く色褪せていなかった。
20年間の月日は昨日の事のようである。ただ、驚くべきは彼女の性愛技巧
であった。20年前ひたすらしがみ付くだけのネンネがフェラチオをし、バ
ックで「気持ち良い。」と叫ぶ好色女に変身をしていた。腕の肘を床に突
き、尻を高く持ち上げ、腰を振る。隠語を叫ぶ。恋愛感情は20年前と変わ
らず、肉体だけが変わっていた。旅行中イロイロ尋ねると、亭主以外との不
倫はかなりあるらしい。「貴方のせいよ!」等と言われても、その気になる
ほど私も甘くはない。それでも女は図々しい。50~60歳になっても相変
わらず夢見る少女である。女は経済的に安定さえしていれば何時までも少女
で居られる。自分の歳も忘れて恋をする。そういえば再会時に彼女のパンテ
ィが鮮やかなオレンジ色だったのが妙に印象に残っている。