所長の企画した歓迎会は、仕事が終わってからと言うことで、午後7時か
らだった。
職場から歩いて5分ほどの、なじみの小さな中華店で、ささやかながら顔
つなぎというか、職員の懇親も兼ねて、和やかに過ごすことが出来、職員が
和気藹々と楽しい時間を共有できた。
私はもともと酒類は弱く、その日は都合があって自動車で出社していたの
で、ウーロン茶とジュースでとおした。
宴もたけなわとなり、みんなすっかり満足して、先輩格の音頭の挨拶でお
ひらきになった。
気のあった者は、2次会に繰り出す者や、早々に引き上げる者などそれぞ
れに解散した。私はタクシーの手配をして、飲んだ者を送り出した。
みんなが去った後、職場の駐車場に置いてある自動車まで歩いていると、
山中さんもついてくる。
「じつは、わたしも今日は自動車で来たんです。」と言う。
確かに彼女は、白い軽自動車で通勤している。きょうは飲み会と言うことで
電車できたものとばかり思っていた。
「それじゃ、さっきのタクシーでいけばよかったなぁ。」
「いえ、いいんです。そんなに飲んでいませんし、車の中で、少し休んで
いきますから。」
確かに山中ルミは、そんなに飲んではいなかったようだ。みんなに注いで
挨拶をして回っていたが、自ら飲んでいるようにはなかった。
「いまからでも、タクシーをよんであげようか。」
「いえ、ほんとにいいんです。」
そんなことを、話しながら、駐車場に歩いていく。
「今日は単身赴任のご主人が帰られる日と違うんですか。早く帰ってあげ
ないと。」
「いえ、先週戻ったので、今週は帰らないんです。」
毎週の週末には帰らないと言うことだ。車の中で、酔いを覚まさせておい
て、自分一人がかえるのも悪い気がした。
「そうなんですか。車の中で待つというのも何なんですから、少しお茶で
も飲んで覚ましますか。」と気を遣う。
「でもわるいですから。」
「いやいいだよ、ここにはいろう。」
ちょうど、喫茶店の前に来たのでそこに入ろうとしたが、あいにく閉店した
後だった。