10年以上前の話になる。
私は妻とも円満で、かつ適当に若い女とも遊び、それなりの満足できる生活を送っていた。そんな私が、人妻の魅力にはまってしまうきっかけになったある出逢いがあった。
当時、女性の総合職登用の道が開け、わが社の営業課長にもR子(当時36歳)が就任した。的確で冷静な判断力、女性特有のあたりの柔らかさを誰もが認める優秀な人だった。
3つほど年上の彼女に、部署は違うが尊敬の念さえ抱いていたが、やはり社内には反発もあった。頭のいい彼女のことだから、そういう空気は十分察していたが、そのことを感じさせない見事な職場の仕切りっぷりにも私は惚れていた・・・ただし、その時は単に上司として。
あるとき、営業の新規開拓に技術部から社員を派遣せよとのお達しがあった。たまたま指名された私の上司が病気になり、急遽私が代理として同行することになった。課長・R子直々の営業は残念ながら順調には運ばず、ある日の終業後、作戦会議と称して一緒に酒場に出向くこととなる。
「あなたとはなんとなくウマがあうわね。」
「ありがとうございます。尊敬するS課長にそう言って頂けるなんて。」
「何よ、そんなに改まって。こういう場所ぐらい堅苦しいことは抜きよ。」
杯を重ね、ずいぶん距離が近づいたように感じた。
「主人はね、今年いっぱいは帰ってこないの。あの人は仕事と結婚したのよ。」
某研究機関に在籍し、半年間の海洋調査に出かけているのだという。
なんとなくさびしそうな表情に、この人もやっぱり普通の女なんだ・・・と実感した。
「みんなにうるさいやつだって思われてるのはわかってるわ。あたし子供が生めないし・・・仕事にかけよう!と思ってがむしゃらに頑張ってきたんだけど。やっぱり・・・」
仕事に厳しく、またちょっとキツそうなその容貌から、彼女がよく似た有名ニュースキャスターになぞらえて「ミスズさま」などと陰口をたたかれていたことも事実である。ちょっぴり悲しそうにグラスを揺らす仕草が、ますます私の心をかき乱した。
「さ、早く帰りなさい。奥さん待ってるぞ。」
したたかに飲んで、かなり酔っていたが気遣いを忘れないあたりはさすがだ。私は気持ちを立て直し、彼女をタクシーで送り届けることにした。
車を待たせ、マンションのエントランスまで送る。
エレベータに乗り込んだ彼女に別れの挨拶をしたときだ。
「これぐらいはいいよね。」いきなり私の唇にキスをし、いたずらっぽく笑いながら、階上へと消えてゆくR子・・・体の芯を貫くような衝撃だった。