※バー店内→駅※
渡された名刺に目を落とすと綺麗で丁寧な字で個人の携帯番号が書かれている。こんな風に黒瀬という大人の男性に特別扱いされている事に胸の奥で体温が上がっていくのを止められない。無意識に手で顔をパタパタと扇ぐ。
田中とまだ付き合ってる状態なのに…、いけないと分かっている。だけど黒瀬の優しさに触れるたび田中の存在が薄れていく、黒瀬に渡された名刺をそっと手に包み鈴は赤くなった顔を隠すように俯いた。バーを出て駅へ向かう途中隣を歩く黒瀬からふと声をかけられた。
「今日は付き合ってくれて…」黒瀬のセクシーな声が耳の奥を熱くする。その姿を同僚に目撃されてるとは夢にも思わず、隣を歩く黒瀬の背の高さや綺麗に磨かれた革靴の足音、漂う落ち着いた香りに感じながら声も出せずにただ顔を伏せて歩いていた。
※タクシー内〜女子寮※
ロータリーで拾ったタクシーに乗り込むと、流れる夜景と狭い車内に黒瀬の気配が満ちていてどうしていいか分からなくなる。(このまま時間が止まればいいのに…何だかドキドキする私、何を考えてるんだろう……)
黒瀬を想う気持ちと田中への罪悪感に揺れながら、タクシーは寮の前を少し避けた暗い通りで停車した。
「黒瀬さん、本当にありがとうございました」車を降りて頭を下げる。窓越しに優しく見つめる甘い視線に胸が締め付けられる。彼を見送り寮へ歩く背中を寮の子にばっちり見られていたとは夢にも思わず鈴は自室へ駆け込んだ。
ベッドに倒れ込み名刺の裏の番号を指先でなぞって切なく息を吐き出す。(田中さんとちゃんと終わらせなきゃ…。黒瀬さんに連絡したい……)
※居酒屋の女子会※
その頃、居酒屋で女子会中の先輩の元へ後輩から興奮気味に電話が入る。
同期女性警官「先輩!さっき駅前で、りんりんが田中先輩じゃない背の高い男の人とタクシーに乗るの見ちゃいました!」
先輩女性警官「マジ!?鈴、夕方は黒瀬警視長と青山警視正に連れ出されてたわよ。どっちかと二人きり!?ドン介の奴、ショックでマジで倒れんじゃねぇ?マジ飯ウマすぎでしょ、ギャハハハ!」
同期女性警官「ほんとですよ!田中先輩なんてドジでガサツですし、エリート様に溺愛されたほうが絶対幸せです♡」
「よし、今度りんりん問い詰めよ〜♡」「賛成ぇ〜☆」「乾杯〜♪」
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