思いの外、いや、想定通り…の反応というべきなのだろう。
編集長から新しい担当の話を聞いた時から気にはなっていた。
熱狂的なファン。
一読者として作品の魅力に魅力を感じるだけではなく、年齢差もある中で作者自身を知った上でも強く志望している。
そう言う話だった。
そして蓋を開けてみれば裏表のなさそうな、真面目で健気な雰囲気を持つ少女のような女の子だった。
第一印象は合格点。
何より当たりだと感じたのは2度目になる今日。
明らかに男を意識して服装、髪型、メイクも変化していたことだ。
圧倒的…、な存在を目にすればいくらでも染まっていきそうな…そんな素質をすでに醸し出していたのだから。
「そう…、その言葉を聞いて安心したよ。
無理を強いるつもりはないとはいえ、担当がいないのは私としてもやりづらいところはあるんだ。
あまり何人も何人も自宅に出入りしてほしくない、という気持ちもあるしね。
君さえよければ、アシスタントの業務も並行して行ってくれると助かる。
さっきの子は次の担当が決まるまでの一時的なアシスタントでね。
決まれば別のところへ配属することが決まっている子だったんだよ…。」
柔らかい言葉尻、気さくさで明るい接し方は前提。
しかし、それでいてもなお、仕事の話となるとややピリつく感じを敢えて孕ませる。
ただ、好きな作家の近くにいることを楽しまれては困る、と言わんばかりに。
「一応編集長にも許可は得ている。
私の担当になった子は、出社の一部をリモートにしても良いということになっていてね。
定例の会議、非常時の招集以外は出社義務は免除してくれるそうだ。
締め切り前や煮詰まった時は、泊まり込みで手伝ってもらうことも増えるだろう。
予備の着替えは置いておくといいかもしれないね…。」
改めて告げられる、本格的な担当になることの意味。
物理的に、時間のほとんどを男の為に使うという形の言葉。
若い女が、憧れとは言え見知らぬ男の部屋に。
男が何かを告げるたび、脳内に木霊する。
『決めるのは君だ。』
という言葉。
男は決して強いない、選択肢を与え、選ばせる。
自らの意思で。
「それでも担当でいたい、降りる気はない。というなら、その旨を編集長に君から連絡してくれ。
降りる場合は私から、是が非でも外れたくないという意志は君から、そう言う話になっているからね。」
選択の連続、それは果歩を幾度となく自らの足で奈落へと進ませる。
静かなマンションの一室。
普通に生活していては立ち入ることもなかったような場所、その非現実的な空気が一層冷静な判断を狂わせる。
SM官能小説を描く男。
その手伝い。
そして出来ることは何でも、と告げてしまった自分。
どこまでをどう受け捉えられているかもわからない。
「正式な担当として確定したら…、さっそく私の小説の感想を聞いていきたいね…。」
出口のない檻の中に入れられた、哀れな雌の生活が顔を覗かせ始める。
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