最初にして最大とも言える関門を突破した、と言えそうだ。
女がワンピースを肩から下げていく、その様子を見ながら緩みそうな口元を少し怪訝な表情を浮かべて誤魔化しながら。
(この女も別に馬鹿じゃない、ただ必死なだけ、真面目なだけ。
それだけ旦那への愛情が大きい、そう言う事なんだろう。
そして医者という存在への異常なまでの信頼。
それは幾度となくカウンセリング、リハビリテーション、アドバイスを繰り返すことで、勝手に出来上がっていく。
便利な職業さ…、非常に…ね。)
羞恥に頬を染め、上目遣いでこちらを見つめるその瞳。
その表情はほんの一瞬、その行為が夫の治療の為であることを忘れ、医師である男の承認されることを求めているように見えた。
夫の治療行為の為、という意識が強ければ恥ずかしい思いをしながらも、その行動が勃起につながるかどうかを知る必要がある。
とすれば視線が赴く先は遠慮がちでも男の股間に向くべき、しかし、女は男の表情を見ていた。
これでいいですか?まるでそう問いかけているように。
きっかけ、動機、目的は夫の為、治療の為。
恥ずかしい思いをする、男の指示に従うのはそのための手段に過ぎない。
それを徐々にすり替えていく。
本来の目的を徐々にぼんやりとさせ、男の指示に従うことが目的へと変わっていく、そんなすり替えを。
「きちんと私の意図が伝わっているようで、ほっとしています。果歩さん。」
そしてそこで初めて少し微笑みを浮かべる。
貴女、奥様、妻として、等という代名詞ではなく、長島果歩に掛ける言葉に変わっていく。
「そして、どうですか…?効果はありましたか…?」
女と同様に男はゆっくりと立ち上がる。
背筋を伸ばし、やや腰を反らすような体勢で股間部を女に向かって突き出すように。
しかし膨らむどころか、白の履物の股間部は平坦のまま。
そんなものでは何の反応もしない、暗にそう告げているようだ。
「大丈夫です、直ぐにどうこう、という話ではない。
果歩さんのペースでいいんです。
ご主人の為、なのは変わりません、しかしその為に果歩さん自身の身体を犠牲にしているのは事実。
そしてそれは今後、日常のモノに変わっていく。
だとすれば、勢いでどうにかなるものじゃない。
納得して、受け入れて、さらけ出して行けなければ続かないし、それは治療にはつながらない。」
夫の為、を忘れさせようとする一方で、時折夫の為をちらつかせる矛盾。
そうすることで気づかせる。
夫の為であるべきはずの行為が、徐々に興奮している自分、あるいは従う事を求め始める自分に変化し始めるということを。
まだ序の口。
そうなるには時間を要するだろう。
焦らず、時間をかけて確実に解体していく。
長島果歩を妻から女へ、女から雌へと…。
「さぁ、続けてください…。」
そして当然のように、そんなものでは何の意味もないというかのように少し冷たく言い放つ。
数分前に浮かべた笑みとは真逆の、見透かすような少し力強さを感じる瞳を向けて。
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