署名を夫の手で書き終えられた後、促されるように契約書は瑠璃子の手から戻ってくる。
薄い数枚重なっただけの紙の束、その淵が震えている。
手だけを見ていてはわからなかったかもしれないが、その紙の動きが女の恐怖や緊張を伝えてくる。
少なくとも今は、良い気持ちなど微塵もないだろう。
張り詰めた空気感、そして夫が記入した内容も相まってそれが余計に大きくなったに違いない。
「拝見しますね…。」
そんな様子さえ見逃さず見つめながら、男は契約書を受け取り改めて目を通す。
記入の最中もずっと視線を向けていた。
内容は全部確認した上でのその言葉は、あえて。
夫が記載した部分に関しては最低限の確認で十分。
必要なのは瑠璃子が自ら記載した部分。
ある程度の自己紹介、あるいは他己紹介の可能性は考えていただろう。
しかしここまで細かく、それも口頭ではなく書面にさせられるとは思っていなかっただろう。
すなわち、偽りの回答を準備する余裕はなかった…事実のみが記載されている…と言える。
「162…、52…。
89…、F…、62…88…。」
数字のみの復唱、に合わせて視線が瑠璃子の身体を舐めるように這う。
まるで読み合せ、答え合わせ、確認するかのようにじっくりと、見透かしたような視線。
口元が少し緩んだ、そして…。
「なるほど…。ご主人とは月1回程度…。に対して、
他人とは概ね月2回程度…、そしてさらに自慰は平均週3回…というところですか…。
生理周期を考えれば、セックスは週1回。
そしてそれ以外の日も2日に1回は自慰…、オナニーに興じている。
ここへ来られたのはもちろん、ご主人たっての希望でしょうが…。
真面目で控えめと自称した…、それは事実でしょうけど…、
旺盛なようだ…、思った以上に、性欲は…。
本当に厭らしい女なのでしょうね…、淫乱…そう囁かれるのは煽るだけではない。
恐らく事実…、そういうことだ…。」
嘲笑うような視線を瑠璃子に向け、続けて、良くまぁこんな雌を提供してくれたと言わんばかりの見下したような視線を夫に向ける。
「わかりました…全て確認いたしました。
費用についてはこちらにお振込みください。」
そう小さく口にすると、男はさらに続ける。
「では、いつから開始にするか…。ですが、奥様…瑠璃子さんの状態を確認して決めることにしましょうか。
瑠璃子さん…この場で下着を脱いでください。
そして我々二人にしっかりと広げて見せてください。
特に染み、汚れがなければ今日は打ち合わせのみ。
改めて後日、奥様・瑠璃子さんをお迎えに上がります。
逆に、ご主人…、貴女の目で見てクロッチ部分に染みが広がっていれば、
貴女の奥様は心、そして身体の準備もできていると判断し、このまま私が連れ帰ります。
その場合はブラ、ショーツ共にこの場で脱ぎ捨てていただきます。
妻が預けられることに興奮し、下着を汚す淫乱だった証拠として下着はご主人がお持ち帰りください。
衣食住はもちろん、これから必要になってくるものは全てこちらで準備します。
瑠璃子さんはそのお身体ひとつでお越しくださって問題ありません。
さぁ…、いつでもどうぞ。
急かしはしない、気持ちが落ち着いたらで結構です。
濡れた下着が乾くのを待っていただいてもかまいませんよ…、乾くなら…。ね。」
薄暗い室内で饒舌に語る男。
全てを見透かし、見抜く。
瑠璃子の調教が今にも始まりを迎えようとしている。
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