……見られていた。
何日もここに通い、まるで逃げ場を失ったように同じ絵の前に立ち尽くしていた自分を、彼女はちゃんと見ていたのだ。
心臓が、どくんと大きく跳ねた。頰が熱くなる。慌てて視線を落とそうとしたけれど、柔らかい微笑みが、私を捉えて離さない。
「最近よくお見かけしますね。貴女の絵を見つめる目、素敵ですよ」
その声は低く、甘く、まるで耳の奥に直接指を這わせるようだった。
私は、絵の前に立っていた。
麻縄が肌に食い込み、赤く腫れた乳首に銀色のピアスリングが輝いている女性。
両脚を大きく開かされ、太腿の内側まで縄が食い込み、秘部を卑猥に晒しながらも、瞳だけは恍惚と潤んでいる。
その横の絵では、同じ女性が二人の手に同時に弄ばれ、口を塞がれながらも、腰をくねらせて悶えている。
……私が見つめていたのは、私自身が今、なりたい姿だった。
初めてこのギャラリーに来た日、この絵に触れた瞬間から、胸の奥がざわついて仕方なかった。
学生時代にこっそり眺めていたあの淫靡な世界が、こんなにも美しく、こんなにも生々しく、こんなにも優雅に描かれているなんて。
私は、毎朝仕事に行く前に鏡の前で自分の身体を眺める。
29歳という年齢を重ね、仕事で疲れ果てた体。
誰も知らないところで、夜な夜な一人で妄想に耽りながら指を這わせてきた身体。
でもここにある絵の中の女たちは、違う。
痛みと快楽の境目で溶け合い、縄に締め上げられ、責め具に貫かれ、涙を流しながらも、どこか神々しいほどの恍惚を湛えている。
私は、今日もこの絵の前に立って、想像していた。
……もし、私があの縄に縛られたら。
【井上 未央(ミオ)29歳】
※元投稿はこちら >>