送っていくよと声をかけると、真緒の視線が鋭くなり
ちゃんと自分の気持ちを汲み取れない龍太郎に苛立ちをぶちまける。
いや、そうじゃないんだけど、私には私の、真緒には真緒の立場があるだろう?
立場って何?
男と女が付き合っていくのに、そんなに立場が重要なわけ?と、売り言葉に買い言葉で堂々巡りになるのは目に見えた。
『わかった、わかったから、ちょっと話そう、ねッ?』
真緒の手を引き、人の通りが少ない裏道へ。
『この間言ったことに嘘はないし、真緒にずっと触れてもいたい。
真緒に会う事を楽しみにもしていたよ。』
と言ってしばらく黙って考えた。
結局、私は親の立場になって物を考えてしまっている事に気づいた。
お母さんが夜勤で目が届かないから、その隙になんて、親の立場だったら決して許さないけど、
じゃあ、お宅の真緒さんと付き合っている比奈の父親ですと堂々と言えるか? 言えるわけない。
真緒と付き合っていく以上、母親のことなど考えてはいけないのだ。
自分の立場を悪くしないで、若い真緒と付き合おうと思ってることが、間違いだ。
それじゃあ、単なる責任逃れだ。
向き合うべきは、親の立場ではなく、真緒と正面から向き合う事だ。
『ごめん、真緒。
私が、真剣に真緒と向き合っていなかった。
もっと、自分の気持ちに正直になる。
真緒が、同級生に年上の人と付き合っているんだけど、ちょっとウザいと愚痴るくらいに、真緒に向き合う、その覚悟が足りなかった。』
世間のしがらみに、結婚してるとか子供がいるとか縛られていると、自分自身がそう思い込んで自分自身を縛っていたんだ。
そう思う事で、若い真緒と付き合いながら、その事を隠そうとする狡い心に気づいた。
真剣に向き合ってくれてるピュアな真緒に申し訳なかった。
『ごめん、もっと我儘に正直に真緒と向き合うから、機嫌、直して?
ねッ?』
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