人の心を乱すだけ乱しておいて、あっさりと引く龍太郎をギュッと睨みつける。帰り支度をしてくるように、と言いつけて教室を出ていこうとする。
「ばかっ、もうしない」
そんな龍太郎の背中に、そう噛み付く。龍太郎からは完全敗北した小型犬がキャンと叫んだようなものだろう。幸い、廊下には誰もいなかった。
龍太郎が視聴覚室から出ていった後、平常心に戻らなきゃと思いながら真緒も続く。でも早く打ち鳴らす心臓は真緒の意思ではコントロールできず、やや早歩きで教室に戻った。
正直なところ、暁斗のことはすっかり頭から抜け落ちていた。廊下で話し声も聞こえなかったから、誰もいないと思っていた。教室に入ろうとしたときに入り口で鉢合わせ、思わず叫んでしまう。
「きゃあっ!・・・や、山本くん、ごめんなさい、びっくりしちゃって・・。」
驚いたことで余計に鼓動が速くなった。バツが悪そうに謝罪する。
こちらこそ驚かせてごめんと暁斗も謝り、続けて、打ち合わせはどうだったかと尋ねてくる。
「えっ・・あ・・うん、今から、警察署に行ってみることになった。だからごめん、待っててくれたのに、一緒には帰れない。」
ほんとに、ごめんね、と早口でそう言って、荷物を持ってすぐに教室を出ていってしまう。普段の優等生で大人びている、落ち着いていると評価される真緒らしくない忙しなさだった。顔も心なしかいつもより上気していたような。
そんな真緒の変わった様子は急いでいたから?驚かせたから?違和感に暁斗は気付くだろうか?
早歩きで廊下を歩く。龍太郎が待っているであろう、職員室へ向かう。
ちょうどたどり着いたその頃、龍太郎が職員室から出てくるところだった。
「先生、お待たせしました。」
いつもの優等生には戻しているつもりだが、龍太郎には怒っていると視線や表情、動きで伝わるだろう。
【暁斗にも意地悪してしまいました。笑】
※元投稿はこちら >>