キスや手を繋ぐのは禁止だと龍太郎が言う。怒られるだろうなと思っていたから、何とも思わない。今日だけは龍太郎の赴任を記念にちょっとイタズラしたかっただけだったから。
一人暮らしにしてはやや大きめのテーブル、妻や娘が訪ねてきた用・・ではなく、自分を一緒に食事をとるためなのかと期待する。勿論、仕事のためもあるかもしれないが。
言われた通りに割り箸とプラスチックのスプーンを並べる。週末の誘いに、嬉しそうに「うんっ」と答えた。
「いい匂い・・龍太郎さん、お料理できるんだね。」
廊下でキッチンに向かう龍太郎の後ろに体をぴたりとくっつかせ、手元を覗き見る。「危ないよ」と少し慌てた様子の龍太郎にクスリと笑い、離れてリビングに戻った。
紙皿なのが少し不格好だが、美味しそうな料理がテーブルに並ぶ。
「いただきます。・・美味しい、お店で食べるみたい。」
真緒も多忙の母の代わりに料理はする方だと思うが、龍太郎の料理は素直に美味しかった。美味しさもそうだが、出来立ては温かくて、自分のためにと腕を振るってくれた事実に心が満たされる気もした。
「こうやってると、家族みたいだね。」
嬉しそうに笑って、また一口食べる。夫婦を指すのか、父娘を指すのか、明言はしなかった。
料理は美味しいし、龍太郎と過ごす時間は楽しい。あっという間に平らげてしまい、後片付けをしようと席を立つ。と言っても、使い捨てばかりだからすぐに終わってしまったけれど。
「・・あ、龍太郎さん。私ね、パジャマ持ってきてないからお風呂の後貸してほしいな。だめ?」
ふと、思い出したようにそう言った。荷物が嵩張るから持ってこなかったというのもあるし、あまり置いても迷惑かな、とも思ったのだ。
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