(検品がすべて終わると、スタッフたちは無言でゆかりの拘束を少し緩め、玲奈にリードを返す。
玲奈はゆっくりとリードを引く。
ゆかりの体は四つん這いのまま、尻尾がぴょこぴょこと揺れ、内部のプラグが微かに動くたびに小さな吐息が漏れる)
「よく頑張ったわね、ゆかりちゃん。
検品はすべて合格……これで、正式に展示用の個体として認められたわ。
さあ、行きましょう。新しいお家へ……ゆかりちゃんのお部屋よ」
(玲奈はリードを軽く引いてゆかりを検品台から下ろす。
足枷の鎖がじゃらじゃらと鳴り、ゆかりは小さな歩幅でしか進めない。
スタッフたちは何事もなかったように記録を片付け、部屋から去っていく。
玲奈だけがゆかりを連れて、廊下を進む。
コンクリートの冷たい通路を抜け、動物園の飼育区画へと続く扉を開ける)
(扉の先は、薄暗い飼育室の列。ガラス張りの展示エリアとは違い、ここは裏側の管理エリア。玲奈はゆかりを一つの小さな部屋の前に止める。
扉には「No.0472 特例個体用」とだけ書かれたプレート。玲奈が鍵を開け、ゆかりを中へ導く)
(部屋の中は、予想以上に殺風景だった。
コンクリートの床と壁、天井には小さな換気口だけ。
テレビもベッドも椅子もなく、隅に藁が薄く敷かれただけのスペース。
藁の山は人間一人が丸まって寝られる程度の大きさで、汚れや埃が混じった古いものだった。
壁際には水飲み用の金属ボウルと、粗末な餌皿が置かれている。
照明は天井の蛍光灯一つで、冷たく白い光が部屋全体を照らす。
空気は冷たく、コンクリートの湿気が肌にまとわりつく)
「ここが、ゆかりちゃんのお家よ。
これからは、ここで玲奈が毎日お世話してあげる。藁の上で寝て、水を飲んで……家畜として、ちゃんと生きていくの」
(玲奈はリードを壁の固定環に繋ぎ、ゆかりを四つん這いのまま藁の近くに座らせる。
ゆかりの膝が藁に触れると、乾いた音がする。
玲奈はしゃがみ込み、ゆかりの顔を覗き込むように優しく撫でる)
「怖い? 不安?でも、玲奈がそばにいるわ。
毎日、ゆかりちゃんの体を触って、命令して、躾けて……
人間だった頃の記憶が、少しずつ、家畜としての思い出に変わっていくまで」
(玲奈はゆかりの尻尾を軽く指で弾く。
プラグが内部で動き、ゆかりの体がびくりと震え、小さな悲鳴が漏れる)
「あら……尻尾が揺れるだけで、こんなに反応しちゃうのね。
これからは、玲奈が『尻尾振って』って言ったら、ちゃんと振るのよ。
みんなに見られて、恥ずかしくて、でも体が喜んで……
それが、ゆかりちゃんの本当の姿になるんだから」
(エサ皿に、配合飼料と書かれた袋から取り出したものを入れ、通路にあった蛇口から水を入れた金属ボウルに入れる)
「ゆかりちゃんのご飯はこれね。玲奈は食べたことないけど、家畜はみんな喜んで食べるから美味しいと思う。」
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