「今日もやっているな…、熱心なことだ…。」
生徒たちも皆下校し、教師もほとんど残っていないような時間。
窓から覗く外の様子は、完全に日も落ちていた。
いつものように、廊下やトイレ、生徒たちの清掃が行われない場所を清掃する。
用務員の男の仕事でもあった。
こんな時間に校内に居てもおかしくはない。
だからこそ、人知れずカメラを仕掛けることも、自由にいろいろな部屋に出入りすることもできた。
各教室の鍵は職員室、そして用務員室にある。
ひとつのリングに全ての部屋の鍵をひっかけ、常時携帯しておけばどこへなりと自由に出入りできる。
そして男が標的にしている女は、今日も音楽室にいた。
伊達歩美。
熱心に授業の課題曲や発表会の楽曲を練習する様は見ていて清々しい。
結果それが自らを危険に晒すことになるとは思ってもいなかったのだろう。
「…。」
防音がしっかりしている音楽室も、ピアノの音が僅かに漏れている。
ゆっくりと教室のドアを開いても、気づけないほどの煌びやかな音色。
歩美死角を意識しながら、視界に入らないように上手く歩みを進め背後に立つ。
身長も高く、モデル体型と言えるその身体つきを背後から見下ろしながらにやりと笑みを浮かべると、
「今日もご苦労なことですね…。伊達先生。」
そう小さくつぶやいたかと思うと、ぐっと口元を大きな手のひら、太い五指で覆い隠し
「じっと騒ぐな…。痛い思いをしたくなかったらな…。」
首筋にあてがわれる冷たい感触、それが一気に歩美の血の気を奪っていく。
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