「少し時間は早いけど…ゆっくりしているといい。
荷物は徐々に運び込むとして、ひとまず着替えの入っているバッグはここへ置いておくから。
そこのクローゼットと引き出しを使うといい。
本当は部屋の扉にも鍵を付けてあげたかったんだが、何かあってからでは遅いと思って付けないようにしたんだ。
悪く思わないでくれ…久美子ちゃん。」
そこは正直に、ドアには鍵がかからないことを告げる。
しかし、特殊加工の壁、完全に透明でそこに隔たりなどないかのよう。
まるでそれは一つの部屋であるかのようにも見える。
四隅には離れていても様子が確認できるようにカメラを設置。
クローゼットもアクリル仕様、引き出しも締まっていても全て中が見えるようになっている。
下着のルーティンも、着替えはもちろん、漏れる独り言の全ても男に筒抜けになる完全に把握された仕様。
「夕食の準備ができたら声をかけるから。
着替えを済ませてゆっくりしているといい…。
それじゃ、俺はいったんリビングに戻るから。」
そう言って久美子を残し、リビングへ。
目の不自由な人間を取り残す罪悪感はある。
しかし、一方でそれでも一人の時間は欲しいだろう。
そんな表向きの気遣いをわざとらしく感じさせながら。
簡易的に料理を進めながら、音声まで拾う久美子の私室のカメラをスマホ上で確認し。
※元投稿はこちら >>