「あ、ありがとうございます…」
目の見えない久美子には、どんな家なのかもわかりませんでしたが、夫と暮らしていたマンションとは違い、広い玄関なのだと分かりました。
靴くらい自分でも脱ぐことはできましたが、ごく自然に言葉をかけられ、久美子は白いワンピースの裾を押さえ軽く足を上げます…
玄関先に足をかけ上がろうもしながら手を壁へと伸ばすと、そこにはちょうど久美子が掴まり易い所に手すりか据え付けられていました。
車の中で久美子のために少し家をいしったことを聞かされていましたが、こういう意味だったのだと気づいたのです。
(お、お義兄さん…)
自分のしたことを自ら口にするでもなく、さり気ない気遣いが久美子には無性に嬉し事でした。
本来の義兄の目的など思いもせず、只々感謝の気持ちでいっぱいでした。
義兄に手を引かれ居間へと案内されます…玄関と同じように長い廊下はには少し驚きました。
手を加えたとはいえ、夫もこの家で…この廊下を走り回ったかと思うと多少つらくはありましたが、何時までもくよくよしていては夫と悲しむに違いありません…何より義兄に対しても後ろばかりを振り返っていては申し訳ないとも思えたからです。
「お義兄さん…本当にありがとうございます…1日ても早く自分のことができるように頑張りますから…」
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