車を走らせること数時間。
視力を失った弟の妻、久美子の面倒を見ることになり地元に帰ってきた。
空気が綺麗、自然が豊か、と言えば聞こえはいいが正直それだけだ。
小さな村はもはや住民全てが親戚と言えるほどの関係性。
彼女ができても、結婚しても、悪いことをしても、全員の耳に入ってしまう、そんな村。
正直、目は見えていないんだ。
何処へ連れ込もうが、それこそわざわざこんなところまで連れてくる理由もないわけだが、男には狙いがあった。
「久美子ちゃんも、お疲れ様。
そんなにかしこまらなくていいよ…?これからは家族みたいなもんなんだから…。
いつまでもそんな風にかしこまってちゃ、俺も気を使っちゃうからさ…。
さ、こっちだよ…。」
助手席側のドアを開き、そっと久美子の手を取る。
スリムな体型、透き通った肌。
大きな瞳…には、残念ながら光は宿っておらず、視線が動くような様子もない。
本当に見えていないんだな…、久美子の一挙手一投足が彼女の世界は真っ白なのだと認識させてくる。
玄関扉の鍵を開ければ、小さな戸建ての入り口が開く。
築数十年を過ぎた、ボロ屋という程ではないが新築だったとのはもう過去の話。
ところどころ傷みも見えるが、久美子には決してわからない事。
「さ、足を上げて…靴を脱ごうか…久美子ちゃん。」
すっとしゃがみ込み、久美子の腰に手を回して支えながら促す。
共同生活の始まりは、決して逃げられない牢獄への投函でもある。
様々な仕掛けを施し、出迎える準備を整えた淫靡で陰湿な、牢獄へ。
【どこかで服装だけ頂けると助かります。】
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