「ねぇ…?私、ちゃんとできたでしょ…?」
約束の日、前夜。
知ってか知らずか、松川家でも同じようなやり取りがされていた。
緊張と戸惑いが先行する長谷川夫妻とは違い、こちらは誘った側。
スワッピングという行為に対する緊張という物自体はさほど無い様。
並んでソファに腰掛けていると、七海が潤んだ瞳で媚びるような視線を向けてくる。
今回の提案は、七海からの進言。
あくまで夫からの褒美として、より愛されることを望んだ結果だ。
七海にしてみれば、長谷川の夫などさほど興味はなく、あくまで自身の夫である正嗣の悦び、興奮が最も重要なこと。
夫が悦びを感じるのか、準備した餌を気に入るのかどうか、の方に表情を強張らせていた。
「あぁ…もちろんさ…。」
多くは語らず、大きな手で妻の頭を少し乱暴に撫でる夫。
しかしその振る舞いにさえ、表情を赤らめ蕩けるような笑みを浮かべる妻。
調教じみた行為が、夫婦間に合ったわけではない。
しかし、既に主従のような関係性がこの夫婦の中には築かれていた。
-翌日-
「行ってくるね…。」
自分で整えた舞台、とはいえ、他の女が愛する夫に抱かれてしまう。
そんな不安はどうしても拭いきれない。
しかし言ってるわけにもいかない、と自分を何とか鼓舞し、自宅を後にする妻。
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「どうぞ…。
突然の妻の申し出…、ごめんね。茜さん…。
嫌だったら断ってくれても良かったのに…。」
妻と入れ替わるように訪れた長谷川の妻、茜を招き入れるとリビングに通し、茶を入れる。
柔らかい口調、余裕のある笑みは年齢差故か。
あるいは、受け入れたこと自体が、どこかにそう言う欲、があることを露呈させたことで、見る目が変わったのか。
穏やかに話す男の視線は、いつも以上に茜の身体を舐めるように見つめている。
「初回の解散は、明日の15時…だったね…。」
初回から泊まりを提案させ、一晩愉しみ切る算段。
緊張気味の茜の反応を伺うように、問いかけ、自身も淹れた茶に口をつける。
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