「っと…。」
男にとって、スマホにポップアップ表示があるのはもはやLINEかこのアプリくらいのモノ。
そしてそのLINEもよほど緊急な用事がない限りはほとんどなることもない。
あっても会社の人間が業務の確認で連絡してくる程度の事。
もちろん数往復もすれば音沙汰はなくなる。
故に、不意打ち気味のポップアップ。通知音は男を驚かせるには十分なのだ。
そしてこの日は特に、まだ誰にもメッセージなど送ってもいない。
少し前に気になるプロフィールにいいねを押したくらいのモノ。
メッセージ通知が来る理由などなかったのだ。
基本的に連絡は男がめぼしい女性を見繕ってアプローチ。
それを受け取った女性が、選択するかしないかの世界線。
女性からのメッセージは基本サクラと相場は決まっているのだ。
いつもならスルー。
見向きもしないのだが、今夜は違う。
相手がいいねをした例の女の子からだったのだ。
それも、サクラ特有に一言、二言メッセージなどではなく、しっかりと相手のプロフィールを見てからでないと送れないような内容。
年齢やプロフィールの信憑性はともかく、少なくともサクラではないのだろう。
男はそう思い、内容にもう一度目を通す。
「やっぱり…精子が飲みたいんだな…この子は…。
18歳…という年齢が事実なら、親子ほどの年の差もあるというのに…。」
不審に思っているわけではないが、やはり疑問は先行する。
しかし既に男の中では、魅力的…まで行かなくとも気にはなっているところまで来ていた。
幸いというべきか、コミュニケーションは問題なさそうだと言う事に少し安堵しながら、せっかくなら少し絡んでみるか…程度に思い直して。
『メッセージありがとう。
まさか送ってきてくれるとは思っていなかったからさすがに驚いたよ。
うだつの上がらない会社員ってやつさ。
営業職だよ、あまり利益の出ない得意先ばかりを担当させられていてね。
いつきちゃん、って言うんだね…。
クリエイティブな仕事にはとんと縁がなくてね、若いのに立派じゃないか。
頑張ってね。』
別に上からモノを言う気はない。
しかし18歳という年齢が、それとなく娘と話している感覚を思わせ、俺みたいにはなるなよ、感が出てしまっている。
『そのまま読んでくれていいよ。名前が「えいすけ」なんだ。』
HNをA助としていた男は、わざわざ説明することに少し恥ずかしさを感じながらも
「まぁ確かに、話すならなんて呼べばいいか、は重要だよな。
貴方とか、君とか、おじさん…とか、なんかあれだろうし…。」
そこそこの自己紹介も終えたところで、本題というべき問いかけに答えることに。
『精飲…。
あ、あぁ…もちろんあるよ…。
ただ、そう言う表現をしたことはないからね…。君が、いつきちゃんがイメージしている行為と全く同じかどうかは…まだちょっと自信ないけど…。
口内射精…。
いわゆるごっくん、と言う事…なんだよね…?
そう言う事ならもちろん、構わない…と思っているんだけどね…。』
煮え切らない返事。
だが、気持ちが煮え切らないわけではないのだ。
掴み切れていないからノリきれない、という方が近いのかもしれない。
「コップから飲む…とか言ってるしな…。」
『フェラをしたい、のとはまた別なんだろ…?』
と、異質な出会いに、もはや翻弄されつつある40過ぎの男。
想定外の出会いに、自身がどう変化していくのかもわからない。
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