後藤なつみにより突き飛ばされた優愛。その体は慶次によって受け止められる。
「優愛大丈夫?爺も綾子もそう目くじら立てるものでもないよ。
幸い優愛は僕が抱きとめて怪我も無さそうだし。それに市井にはスリーアウト制というものがあってね」
尻もちをついて、無様に脚を開いていた状態から立ち上がろうとする女を、冷たい目で見下ろしながら、
「後藤先生でしたっけ。先生も式も始まろうというこんな時間に、どうして会場方向から飛び出してきたのですか?
私たちは今まで理事長先生・学園長先生と話をしていて、式開始時間に遅れないように会場に向かっていたところです。まさか式次第頭に入っていないとかですか?」
「それは。(この男子生徒は少し話が通じそうな気も。急に尿意催したからと言ったら、許してくれるかしら?)」
「それは…何です?」
「トイレに…(聞こえるか聞こえないかくらいの小さい声)」
「え、何です?聞こえませんが。」
「トイレに行きたくて…(少しは大きくなったがまだまだ小さい声)」
「もっと大きい声で言って貰わないと、分かりませんよ後藤先生。」
「トイレ、おしっこに行きたいんです…も・漏れちゃう…」
言い捨てるとその場を走り去る後藤なつみ。
走り去る後藤なつみの背中を一瞥して、
「おしっことか大声で言って…笑 恥じらいってものがないのかね…
まあ、いいや。遅れるから少し急ごうか優愛。」
でも走ることはなく、早足で会場へ。
会場の扉を開けると、ガヤガヤとした空気が瞬間に静かになり、視線が入ってきた四人に集中する。
優愛と慶次は当然という感じで中央を並んで堂々と歩き、指定の場所に着座する。
爺こと桜井智と綾子も端からそれぞれ自分の指定場所に
会場からはあちこちから囁き合う声が
「あの方一条優愛様よね、この学園の学園長先生の一人娘の。凄くお綺麗だわ。」
「ということはお隣が、許婚の…名前何だっけ?」
「前田慶次様よ、あの前田財閥の御曹司。行く行くはこの学園の学園長になられる方」
特Aクラスの指定場所に着座すると
「優愛様高校でも同じクラスになれて嬉しいですわ。」
「私も嬉しいです。」
との声があちこちから飛んでくる。
職員席を見ると何とか理事長・学園長の入場までに間に合ったみたいで、後藤なつみが会釈をしながら席に着くところ。
「優愛見てみて。あの後藤せんせ、残念だけど時間に間に合ったみたい。
僕さっきので目付けられちゃったかな(笑)
そうそう公立の中学校2年の時だったかな、後藤せんせとは違うタイプだけど、凄い美人の先生が配属されてきたんだけど、その後すぐに退職しちゃったことがあってさ。
噂で聞いたその理由が、体育教師と校内でやっちゃったみたいなんだ(笑)
で教育上よろしくないとか何とかで、女性教師は退職・男性体育教師は異動に。
教育上よろしくないも何も、中学二年にもなれば皆色気付いてるのにね。」
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