(た、楽しんだとか言うな…!ばかっ!)
翔太が望むような反応はできず、満足させられなかった…、と仄めかすメッセージを送ったばかりでこの発言。
ちょっと文句言いたげに翔太を睨んだが、あまり深掘りすればボロが出るのは凛花の方であり、口をつぐむばかりだった。
翔太の腕から解放され、優一の元に戻ると、差し伸べられた手を握り返して帰路に着いた。
優一の手はじんわりと手汗が滲んでいて、色々な感情を抱えて待ち合わせ場所来たことがわかった。
(優一は満足している…のかしら…?愛してる妻が他人に抱かれて戻されて…、うーん…、やはり理解はできないけれど…)
今朝までなら、今のタイミングであれこれ文句を言っていたはず。
しかし、つい先ほど与えられた強い快楽を忘れられない。
打算があったわけではないけれど、文句や今後のことについては特に口にしなかった。
「わあ…っ。アンタ、料理は昔っから得意だもんね。…やった!優一のオムライス、1番好き!」
帰宅すると香ばしい匂いがした。
優一に比べて何でもできるタイプの凛花であったが、料理に関しては別。
付き合う前から、優一にねだってはご飯を作ってもらっていた。
微妙に緊張感が漂い、ギクシャクしていた2人だったが、食事を始めてからは少しずつ、いつもの雰囲気に戻りだしていた。
「…今度、中学校の空手部に臨時コーチとして招かれることになったの。お父さんの知り合いが顧問の先生やってるんだって。」
いつもの通り。
「…そうだ。この間話した新しいスーパーだけど、輸入品とかも扱ってるって聞いたの。なんかちょっと面白そうじゃない?」
いつもの通り。
「…ビ、ビデオ…ね。ほんと、こんなのが見たいの…?」
先ほどまでは和やかに、いつもの通りに会話していた2人。
しかし、優一が切り出したことによって、再び少し緊張が走った。
(…本当、寝取られ趣味…って言うの?なんか、いつもより興奮したような目つき…)
優一には似合わないような、ギラついたような目つきに少し戸惑いながらも、スマホを操作して動画を優一に送る。
優一の不安に反し、凛花は素直に動画を送った。凛花は昔から嘘をつくのが得意ではない。
一部しか動画に収めていない後ろめたさから、さっさと動画を渡して満足してもらおう、そんな考えからだった。
「言っとくけど、あ、あまり期待通りじゃないかもね。優一なら知ってると思うけど、感じにくい方なんだから。」
よくもまあつらつらと。
なんて自分でも少し自己嫌悪しつつ、何だか裕一の方を見ていられなくて、皿を片付けて洗い場に立った。
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