(変なパネルで予約(?)するんだ…。なんか手慣れてそうだったし、こういうの慣れていないのバレちゃったかな…。)
部屋はこれでいいか?なんて聞かれたが、言われるがままに頷き、後ろをついて歩くようにしてエレベーターに乗った。
エレベーター内はとても狭く、大柄な翔太が乗れば肌と肌が少し触れ合うほど。
外の駐車場には車が結構停まっていたし、先見たパネルではランプがついていなかった部屋が結構あった。
(つまりみんな…、この建物に集まって、今まさに…。)
ここで数多くの男女がSEXをしている、そのための場所に来たんだという実感が湧いてきて、なんだか緊張すらしてくる。
表情が少し強張ってきたのを見計らって、翔太に声をかけられると、少し上擦った声で返事をした。
「え…。あ、ああ、空手をしているんです。幼い頃から…。今は祖父の代から続いている道場を引き継いで、師範を…。」
「い、いえいえ、子供たち相手に教えている程度で、そんな大それたものじゃ…」
「こう見えて高校では全国でベスト16まで行ったんです。松本さんこそ、ジムトレーナーだなんて凄いです。体格もいいし…、普段から鍛えているんですか?」
口数少なく、事務的な受け答えしかほとんどしていなかったが、運動やスポーツの話題はアイスブレイクに最適だった。
エレベーター内での会話は盛り上がり、廊下を歩く際にも嫌な沈黙は生まれず、むしろ翔太を話しやすい相手とさえ認識してしまった。
しかし、部屋に入ると二人っきりの空間であり、大きいベッドやその脇にわざわざ置いてあるコンドームを見て、やはり少し緊張してしまう。
「…ぁ。は、はい…。セッ、セックス…は、します。夫と約束したので…。でも、条件は守ってください。キスは無しで、撮影は私のスマホ…、それから、やめてほしいことはその都度言いますので、それに従ってください。」
(これはハッキリさせておかないと…。不倫しにきてるわけじゃないんだから、あくまで優一のため…)
大柄な翔太と部屋で二人っきりになっても、怯えたり媚びたりすることなく、しっかり目を見て釘を刺す。
勝気で夫一筋の凛花は数多いセフレにもいないタイプで、心踊る獲物だった。
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