え…なにも…しないの?
(困ったように笑い、まみの頭をぽんぽん…と優しくしてくれ…強張っていた身体が緩和し、ゆっくり目を開けます。「大丈夫。ね?」と表情が語りかけ、まみもまた弱々しくほほえみをかえします)
え?あ…ふく…ほんとだ…気づかなかった…
(大きめの紙袋の中を見ると、ボタンの飛んだワンピース、精液の跡が残るキャミが入っています。お気に入りだったのに…そう呟きながら袋を閉じると、男は気をつけなよ、キミかわいいんだから、それじゃあ!と去っていきます)
ああ…ちょっと…服まで!あの!
(手を振りながら人混みに消えていく背中を目で追い、どうしよう…と胸に手を当てると…)
「ちょっとまみ?どこいくの?こんな時間に!」
本屋さーん!いまいきたいのー!
(その夜、まみは自転車を飛ばして隣町のコインランドリーに行きます。とりあえず汚された自分の服、そして借りた男の服を洗う為です。
洗濯がすみ、乾燥にはいる機械。気持ちよさそうにクルクルまわる服を見ながらボーっとするまみ。
無防備さは相変わらずで、夜も更けようという時間に女の子が一人でボーっと洗濯を眺める…襲ってくれと言っているようなものです。そして何か思いついたかポケットからメモをだし、携帯でなにか話し始めます。)
…次の日曜日…
あ、先週は…どうもありがとうございました。
えと…まみ…北村まみ…です。
(疑う事なくあっけなく名前を教えてしまう世間知らずさ。ここまでくると国宝級の純粋さだ…と影で男はほくそ笑み…それでも、あえて人の多いところを待ち合わせに選んだのはまみなりの警戒からでした)
服…お洗濯してきました。それで、あの…お礼、要らないって言われたんですが、それなら…って…クッキー…焼いてきました。よかったら…食べてください。それじゃあ!
(足早に立ち去ろうとするのを止められます。どうせなら、一緒に食べようよ?と…。まみはついていくのを躊躇います。蘇るのは苦い記憶。舌に残るにがさ…
男が指差した方には家族連れで賑わう公園。おいでよ!と半ば強引に誘う男の後を、あそこなら…と1メートル位後ろをゆっくりとついていきます。この日のまみは目深に帽子を被り、Tシャツの上に半袖の襟付きシャツを重ね着、膝丈のキュロットに靴下、スニーカー…
肌の露出を最小限に抑えてまみなりの警戒心で臨みました。)
…え?おいしい?…よかった…ありがとう…ございます…
(目の前には芝生広場。家族連れがそこらかしこにいます。2人はベンチに座ります。相変わらず距離は2人分…間にお返しする服とクッキーを置いて。俯きながら反対側を見つめ、なにか言葉をまつまみ。やがてでた言葉が「これ、おいしいよ!」…ぱあっ!と一瞬顔が綻びますが、はっ!と気づいてすぐにまた俯き。またしばらく過ぎる時間…)
…え?あたし…ですか?…中1…です。
…高校生にみえる?…調子いい事言わないで…
そう言って近づいて…あたしを捨てて逃げたあの人とか、怖いことしてきたおじさんみたいに!あたしをそんな目でしかみてないんでしょ!
…もういい!あたし帰る!服、ありがとうございました!それじゃあっ!
(大人に見られた。背伸びしたい年頃。あの人も、怖いおじさんも、どこか子供みたいにまみをみてた…でも…もうキミは大人だよって…言ってくれたみたい…うれしい…
ぽっ…と気持ちが緩もうとする瞬間、元パパからも甘い言葉をかけられたのを思い出し、その結果が…
トラウマのようにまみの心に刻まれた傷。男性への不信の眼差し。嬉しさを断ち切るように言葉を強くして立ち上がり、帰ろうとします)
【チョロいというより世間知らずですね?似合う言葉がすぐに出ませんでした。
でも!まみちゃん!そういうところがチョロいんだよ!って言いたくなる展開ですよね…?】
※元投稿はこちら >>