「君なら…この書類の内容もわかるだろ…?
同じ会社に在籍していた君なら…。
そして、妻である君なら…、この字が夫の字かどうかもわかるはずだ…。
何だったら家にあるあいつの書いた字と照らし合わせても良い…。」
鞄から取り出された書類の数々は、精巧につくられた偽物…。
いや、正確には本物の資料に、実際に夫が書いた字を精巧に転写したモノ。
行ってもいない取引先への接待領収書なども同時に取り出して、より信憑性を持たせる。
全ては本物と本物とつなぎ合わせた…偽物。
そんなもの、会社から離れて長い者に見分けられる術はない。
しかし皮肉にも、在籍経験がある者だからこそ、書面自体は本物だと言う事を知っている。
事実を逆手に取った巧妙な手口。
「君はどうしたい…真奈美…。夫を守りたいかい…?」
ゆっくりとした口調で黙ってしまう真奈美の顔を覗き込むように問いかける。
「でもね…、夫を守る…と言う事は、私に犯罪を隠蔽しろ…ということになるんだよ…。
そんなリスクを背負う…、メリットは私にはない…。
君が…その「メリット」になる…というなら、考えない話でも…ないんだが…、決めるのは君だ…真奈美…。」
すっと伸びる男の手、それはあの時を…過去を思い起こさせるように厭らしくねちっこいそれと同様。
幸いというべきか丈の長いスカートだったことが、いきなり直に触れられることを回避できたが、それも時間の問題か。
男はゆっくりと真奈美の太腿に、その五指を滑らせ始める。
※元投稿はこちら >>