「はぁ…はぁ…。久しぶりだね…真奈美…。
開けてくれなかったらどうしようかと思ったよ…、実は君の旦那の事で相談があってね…。」
と、演技とも取れる荒い呼吸を整えながら、玄関先へと入り込むと後ろ手に扉に鍵をかける。
「実はあいつに、君の旦那に今、横領の疑いがかかっていてね…。
秘密裏に調査しているところなんだよ…。
といっても、当人はまだ気づいていない。
私の指示で出張に出させているのも、気づかれずに証拠を掴む為さ…。
失礼するよ…?」
さすがに追い返されないと踏んだのか、男は靴を脱ぎ上がり込むとリビングの方へ。
「すまないが、何か飲み物をくれないか…?」
と、多少は遠慮気味にソファに腰を下ろすと。
「といっても、まだ上司である私の手の内で収まっている段階なんだ…。
先に君に伝えて、どうしたモノか相談しようと思ってね…。」
少し厭らしくも見える男の視線。
それは確実に真奈美の表情ではなくその肉付きの良い身体に向けられている。
現場を離れてしまった真奈美にとって、男の言葉を確認する術はなくかといって事実であれば、それを夫に問い詰めるわけにもいかない。
そんな右も左も地獄のような状態で。
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