「なによ雅美ったら…人が心配してあげてるのに…」
引っ越しをしてはどうかという提案は、あっさりと断られた挙げ句、一方的に話を切り上げ立ち去った雅美にイラだちながらアパートへ向った。
確かにあまりにも唐突な話で、雅美の言うように引っ越すにもお金がかかり、準備のために会社も休まなければならない…そうは思ったが、雅美の態度には腹を立てていた。
普段は、雅美に対してこのような感情を抱くことはない久美子だったが、それだけ焦っていたといえた。
このままでは、もうあの下着泥棒は、久美子のところへは来ないかもしれない…そうなった時に虚無感に耐えられるのだろうか…一度あの興奮を覚えてしまった今…
もう他に手はなく、あとは下着泥棒が来てくれることを願うしかない…何度もため息をつきながらアパートに着いた久美子は、ドアノブにかけられた見覚えのあるビニール袋を見つけ、思わず走り寄った。
(あるはずないか…下着…盗まれていないし…)
ビニール袋の中にはショーツなど入っておらず肩を落とす…下着を盗まれていないのだから返却されるはずもない。
また大きなため息をつく久美子だったが、ビニール袋のそこに四つ折りになった1枚の紙にきづいた…
(本当に来てくれるのかしら…?)
久美子は、電気を消した真っ暗な部屋の中でジッとベランダの方へ目を向けていた。
あの紙に書かれた通り、ピッチハンガーに1枚だけショーツを吊るしたのだ。
下着泥棒からのメッセージから考えられることは、雅美と下着泥棒は連絡を取り合っていることは間違いない。
単に下着を盗まれ返却される…それだけの関係ではないことは明らかだ。
雅美は、あのような事をする下着泥棒とどんな関係なのだろう…
汚され返却される以上の別の何があるのだろうか…それは一体…
雅美の頑なな態度から想像するに、それは久美子が考えもつかない刺激的なことに違いない…
(あれでよかったのかしら…?私の1番のお気に入りって書いてあったけど…)
久美子がピッチハンガーに吊るしたのは、真っ赤なシースルーのショーツ…ショーツ自体を気に入っているわけではないが、あのショーツを履いた時が、久美子にとって刺激的であり、その時間が興奮を覚える至極の時だったからだ。
大事時代、あのシースルーのショーツを先輩に履くように言われ、露出デートをしたりしたのだ。その時の興奮は今でもオナニーのネタにするほど刺激的だったのだ。
時計の針は間もなく0時を指そうとしていた。
閉めたカーテンには、僅かな隙間が作ってあり、道路の街灯のあかりでベランダの様子は、なんとか見て取れる状態…外からは僅かな隙間が開いていることなど分からないだろうし、暗い部屋の様子は見ては取れないはず…
下着泥棒が本当に来るとしたなら…この前のようにベランダで事を済ませるとしたら…
この時ほど時間の流れが遅いと感じたことはなかった…
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