いったいどうしてしまったのだろう…。
誰ともわからない相手に見放された事など私の人生に何の影響もないというのに…。
何故か経験のない事で狼狽えてしまった私は、放っておけば良いものを律儀に返信してしまうなんて…。
「どういうことなの…!?こういう場所に訪れる男は欲望に満ちてるものなんじゃないの?ましてや私に説教じみた言葉を投げかけるなんて…。」
表向きは苛立ちを露わにしているよう。
それは誰もいない空間で自分に言い訳しているだけだという事に気づいていない。
今後、接点のない人物に対して苛立つのなら返事をしなければいいだけ…。
冷静に考えればそんな事わからないはずはない。
しかし何故か今は…その言葉にすがりたい…孤独な私にせめてもの施しを…そんな弱い気持ちが根底に潜んでいたのかもしれない…。
新たにコメントが来るのかどうか…一度は突き放された相手だけに、再び現れるのか内心穏やかではない時を過ごし、祈るような気持ちが見え隠れする不安の中で、そのコメントはサイト上にアップされた…。
「なんなの…この高圧的な物言い…。
なんで私がこんな言葉に従わなければならないの…?」
相変わらず私を見下すような文面。
丁寧な言葉遣いでありながら、その傾向はコメントがアップされる度に強くなっていた。
反発しようとする気持ちが毒づきを口から零し、それでも尚、コメントが返ってきた安心感すら私の中に湧き上がってもいた。
「気持ちのあり方…!?何が言いたいの!私の何が悪いって言うの!」
変わらず口から零れ落ちる毒づき。
しかしながらコメントを何度も読み返すうちに心持ちは落ち着き、何かが私の中に染み込んでくるような感覚にみまわれる…。
「どういう事…?心構えで感じ方が変わるっていうこと…?
今の私には楽しさも興奮も快感もわからないってこと…!?」
《私は嘘なんか言わないわ…?やりもせずにやったなんて言わない…。
貴方が言う通り…やってみればいいのよね…?》
強気な言葉はそのままに、従う姿勢を見せるコメントをあげると、椅子に浅く座ると左右に脚を開いていく。
そう…私の中で何かが変わっていった…。
『素直になるかは貴女次第…。』
そんな言葉が私の中にジワリと染み込んできた…。
言葉のままに…だらしなく…ただ力を抜いて開かれてしまったかのように…。
ゆっくりとスカートの裾を捲り上げて、その奥に隠された下着をそこにはいない誰かに見せつけるように…。
「ここで…こんな格好をしたら…。私の目の前に居るのは…。
そっ…そうよ…あの…出来損ないの役立たず…まっ…松本よ…。
松本に…あんなイヤらしい本を隠し持ってる松本に…見られてしまうわ…。」
目を瞑りゆっくりと10数える私。
その間、あの本を眺めている時に浮かべているであろう卑猥な視線を想像し、その視線が今は私の股間に向けられていると妄想してしまう…。
「やっ…見ないで…松本…。そんなにイヤらしい目で見ないで…。」
つい口から零れ落ちた言葉に、慌てて口を手で押さえても遅かった。
想像したことを口にしてしまったらそれは現実の事になってしまう。
単なる妄想が、私の脳内に浮かんだ光景を露呈してしまった事になる。
「あっ…ダメ…松本が…見てるのに…。」
それでも脚を閉じようとはしない。捲り上げた裾を戻そうともしない。
恥ずかしさ…惨めさを感じながらも、その指先は勝手に胸元に運ばれ、ブラウスのボタンを上から1つ…また1つと外し、深い胸の谷間を露わにしてしまう…。
「イヤっ…見ないで…そんな目で見ないで…。」
向けられる視線を想像して、自らの姿を雑誌の中の女性とダブらせる。
まさか職場でこんなにも淫らな気持ちになろうとは考えてもみなかった。
脚を開き胸元を開き…下着を晒す事になろうとは思ってもみなかった。
ようやく10を数え終わり、服装をもとに戻すとコメントを書き始める。
《やったわよ…?貴方が言うように…浅く座って脚を開いて…スカートを捲り上げて…。
目を閉じて10数えたわ…?
ブラウスのボタンも2つ外して…。
そこからどんな下着が見えたのか…。
そう…いつもなら…普段なら…私の目の前にいる若い部下が見ていたはずよ…?
だらしなく開いた脚…捲り上げたスカートの中に…白いレースの下着が見えたはずよ…。
そう…見られてしまったことを想像したわ…?イヤらしく…ギラギラした視線を向けられた事を…。
パンティも…胸の谷間も…あの男に見られてしまったことを想像したわ…?
ドキドキ…するものなのね…露出って…。
楽しいかどうかはわからない…ただ…もの凄く恥ずかしい事に違いはないわね…。》
楽しさ…興奮…快感…。
そんなものを認める事はできなかった…。
ただドキドキしたと…そう言う事しかできなかった。
鼓動は高鳴り、昂る心と身体。
身体の芯が熱く潤んでいることも告白することはできなかった…。
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