「っと…。12時五分前…。偶然か、12時に来るつもりで五分前に到着したのか…。
いずれにしても、真面目な性格はメッセージからも感じていたけど…。」
ゆっくりと掛けたソファから体を起こして立ち上がる。
あえてインターホンで返答はせず、そのまま玄関へと向かう。
「よく来てくれました。
安藤です…、坂口さん…ですね…?」
出迎えたのは齢三十前後に見える、一見甲斐のなさそうな平凡な容姿の男。
ポロシャツにチノパン。
極端に痩せていたり、太っていたりはしない。
物腰柔らかそうな表情、口調はメールと違わず穏やかだ。
しかし、制服姿で現れた結菜挨拶をして玄関に通すその最中。
視線は一気に結菜の全身を駆け抜けた。
まずは視姦、とでもいうべきか…、素材全体の雰囲気を掴むように。
「さぁ、こっちへどうぞ…?
遠かったかな…?
わざわざ学校帰りにごめんね…?
テーブルに掛けてくれるかい…?飲み物は、コーヒーとオレンジジュース…後は緑茶しかないんだけど…、どれがいいかな…?」
あえて自分は先に声の聞こえる位置でキッチンに消え、着席を促す。
明らかに座席の一点をカメラが直視している光景。
カメラ、に対して少女がどう動くのかも確認する為だ。
撮られる事、をある程度想定しているならそのカメラは自分を映す為だと考える。
なら、レンズの向く先に腰を下ろすだろう。
しかしその逆ならどうか…。
ある意味で信用信頼を勝ち取る意味で、「見えるカメラ」は下げてもいいのかもしれない。
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