「えっ…?」
長い沈黙に絶えられなくなったかのように振り絞るような声で「縛ってみる…?」という圭介クンの言葉…
心の何処かでそれを期待していたのか、迷うことなく頷きました。
「う、うん…」
圭介クンは、分かったと言うように頷き返すと、立ち上がり押入れの中で何かを探しはじめ、暫くして「あった…、」と縄跳びを手にして戻ってきました。
縄跳び…思えば全てのはじまりでした。
千鶴は、圭介クンに背中を向けると手を後ろに回しました。
心臓が口から飛び出るのかとも思えるほど激しく鼓動し、背後からはゴクリと唾を飲み込むような音が聞こえた気がします…
縄跳びが千鶴の身体を2回巻きつけられ、余った縄跳びで後ろに回した両手首を縛られ…
子供の時に感じたゾワゾワなどというもどかしいものでなく、全身をゾクゾクとしたものが止まることなく襲います。
「できたよ…どう?」
少し枯れた声でそう聞かれ、千鶴は圭介クンを振り返りましたが、自分でも分かるほど顔が真っ赤に上気していました。
「う、うん…か、身体が震えるくらい…ドキドキ…してる…」
こんなことを口にするのは、恥ずかしくて仕方ないのに、それを口にすることによりドキドキが増すように思えました。
たちつくしていた圭介クンの顔を見上げてみると、圭介クンもまた顔を赤くしながら息を荒げめを見開き、縄跳びで縛られた千鶴を見下ろしていました。
そんな顔を見て余計に恥ずかしくなり目を伏せましたが、目にとまったのは、ズボンの前が異様に膨らんでいる光景でした。
(えつ…?こ、これって…た、立ってる…?ってこと…?け、圭ちゃん…私を縛って…興奮してる…?)
圭介の夢の中で怪人役は圭介クン本人だと言っていた事を思い出します…
私が自分の夢の中で怪人が圭介であったことは、幼い体験があったからであり、自分自身の願望が夢に現れたのではないと思っていましたが、今ハッキリと自身の願望だったと気づきました。
再び、長い沈黙か続きます…2人ともどうしていいなか…なんと言葉を発すればいいのか分からずに…
そんな時、駐車場に車が入るおとさがきこてきました。
ハッと我に返った2人は慌てます…圭介クンは縛った縄跳びを必死で解こうとしますが、なかなか解けず、ようやく解いた時におばさんが部屋をノックしたのでした。
「帰ったわよ…」その声に「は〜い」と答えました。
立ち上がり一階へ降りようと部屋の入口に歩きかけた千鶴は、振り返らずに呟きました。
「…また…続きは…今度…ね…」
※元投稿はこちら >>