「…。」
清原、加納の会話に相槌を挟む程度で話の輪に入る。
普段から積極的に話す方ではなく、それこそ話題を振られたら話をするくらいのモノだ。
最近は専ら子どもの話題が増えてきた。
幸運にも三人ともが子宝に恵まれ、忙しいながらも幸せな日々を送っている。
子どもの年齢的には、相談させてもらうことが多い安藤は、そう言う意味でも聞くに徹することが多くなっていた。
とはいえ、今日の話題はいつもと少し違って特殊。
清原の娘、沙織のことだった。
盗撮を懸念する父親のもっともな心配。
しかし当の娘は苦手という理由で、回避の為の重ね履きをしないらしい。
本当なのか?と、何度も確認を重ねる加納。
苦笑いを浮かべ、困ったような表情こそ見せるもそこまでその事実を深刻そうに考えている様には見えない清原。
当然…というべきか。
安藤も完全に可能側の立場。
容姿も良く、人当たりも良い清原の娘、沙織が今どき当たり前の重ね履きをしていないそんな事実を聞かされれば、
「あ、沙織ちゃん、こんにちは。今日もお邪魔してるよ。」
いつものように気さくに挨拶をしてくれる帰宅直後の沙織への視線も、いつもよりやや下に。
すらっと伸びる長い脚…その付け根のあたりに向いてしまう。
トイレを借りたいと言いながら、何度もしゃがんでは靴下を整えている加納。
そんな様子さえも、少しその気持ちを理解してしまった安藤。
きゅっとスマホを握った手に力が入る。
いったい何をしようとしているんだ…、と、自分に問いかけながらも、
「沙織ちゃん、手伝うよ…。」
と、加納以上に大胆に沙織に近づいていく自分に内心少し驚きながら。
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