「こんにちは…。
良い物件があれば引っ越しを検討していまして…。
何社か渡り歩いているような状態なんですが…、良いでしょうか…?」
30代中頃から後半くらいに見える男。
ベージュのチノパンに白のポロシャツとラフな恰好ではあるものの、清潔感もあり、洋服も何度も着まわしたようなくたびれた様子も見受けられない。
丁寧な口調と落ち着いた雰囲気。
差し当たって第一印象で悪いイメージを持たれる要素はなさそうに見える。
「妻と、娘が一人おりまして…。
今は2LDKのマンションに住んでいるんですが、そろそろ娘の部屋の事も考えてあげないと…と思っているんです。
仕事の都合上、仕事部屋が必要で後は寝室。
となると、どうして娘の部屋を現状では用意してあげることができないんですよね…。
良い物件があれば、それこそ戸建ての購入も考えてはいるんですが…。」
それなりの購入動機、娘がそれなりの年齢になってくれば自分の部屋を欲しがるというのは一般的によく聞く話ではある。
「ただ、早々に決められる感じではないので、色々見せてもらえれば…と。」
事前に即決の意志、どころか早期で決める気もないことだけははっきりと告げる男。
様子を伺うような視線。
購入資金云々の話ではなさそうなのは、男の視線がちらちらと里奈の身体に滑り降りてくることから想像できそうでもある。
経験から想起させる「目的が購入ではなさそうな客」の存在。
理由をつけてお帰り頂く、なんて対応も今の里奈ならできそうでもあるが…。
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